[[幽々子]]をヤンデレにするべく行動を開始する。

まずは『デレ』を自分に向けてもらうべく、頼もしさをアピールするなどして好感度を上げることにする。
部屋から出て少し廊下を歩くとすぐに白玉楼の庭園が視界いっぱいに広がり、そこで二人が稽古している様子が見えた。
空はもう暗くなり始めている。二人は昼間ごろに竹刀を振るい始めているから、もうずいぶん時間が経っているはずだ。私は気を利かせて休みを取らせよう。
「おーい幽々子、妖夢。そろそろ疲れただろう? ぬるいお茶が入っているよ。あと幽々子、膝枕してあげるからこっちに来なさい」
ついでにスキンシップも図る。
「あら、○○は優しいのね。妖夢とは大違い」
「私の厳しさの中にある優しさがわからないなんて……よろしい、稽古のノルマを倍にして差し上げましょうフフフ」
「○○~、妖夢が怖いわぁ~」
そう言いながら幽々子はニコニコ顔でこっちに近づいてきて私を抱き寄せ、自分の胸に私の顔をうずめさせる。
しっかりと腕を首に回して頭を抱え込み、髪を触ったり頬ずりしたりしながら全身で私を包み込んでくれる。
ああ気持ちいい、どうやら普段の気配り成果が確実に現れているようだ。おっぱいむにゅむにゅ。幽々子かわいいよ幽々子。
「……○○さん、声が漏れていますよ。だらしない顔して、そんなに気持ちいいんですか?」
「○○ってほんとに可愛い。もっと甘えていいのよ」
えへへ……おっと、いけないいけない。頼りないと思われては嫌われてしまう恐れがある。
そっと幽々子の胸から離れてキリッとした表情を作る。
「所で妖夢、今日のご飯は私が作るから、出来るまで遊んでいていいよ」
妖夢にもきちんと構ってやる。幽々子だけにいい顔をしても幽々子は私にいい感情を抱かないだろうし、何より自分も嫌だ。
二人の好意が相乗効果を発揮する事で、より強いデレを生むのだ! デレのないヤンデレなどうれしくもなんともない。
「いいんですか? ○○さんの料理はおいしいから、期待して待っていますね。――それじゃあ幽々子様。体も休めたことですし、修行の続きと致しましょう」
妖夢の満面の笑顔が向けられたとき、幽々子の笑顔が若干引きつったことに私は気付いた。
「い、いやいや妖夢」「うるさい」
「○○~、助けて~」「さあまずは素振り200回から!」
よくあるスキンシップだ。私は幽々子の悲鳴を背に受けながら調理場へ向かった。





食後に食器を片付け、すぐに自分の部屋に戻った。
教養の無い私が幽々子の夫になるためには、詩や漢文などの文化を学んでおかなければならない。
まだ白玉楼に住まわせてもらえなかった頃、よく幽々子との会話で恥ずかしい思いをしたものだ。

「幽々子さん。もし今時間が空いているのなら、ちょっと散歩していきませんか? 朝露が綺麗ですよ」
「白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける ――かしらね」
「……それ、どういう意味なのですか」
「意味を聞くのは無粋よ、○○」
そういって幽々子は微笑んだ。

あの笑顔をもう一度見てみたいと思って、出来るだけ早く幽々子に近づくことができるように、以降私は必死に詩の勉強をした。
今までにそれを怠ったことなど、あんまりない。 
現在こうしてここに住まわせてもらっているのは、おそらく自分に教養が身につき、幽々子に認められたからではないだろうか。
それゆえ知識が増えれば、幽々子はもっと自分の事を好いてくれるのではないかという期待する。
それも'あなたさえいれば他に何もいらない'などと言われるほどに。病んでれ的に。
――まあ、それだけではなく、学んでいくうちに今までに出会ったことの無い感覚をもっと味わいたいという気持ちもある。最近は殆ど多くの時間を自分の部屋で学を学ぶことに費やしている。
結果的に幽々子と話す時間がかなり減ってしまっているが、幽々子に更に好かれるため、自らの向上のため、仕方のないことだと思う。まず相手を惚れさせてから病んでもらうことにする。

「○○、ちょっといいかしら」
急に背中から声が聞こえた。
幽々子がいつの間にか部屋に入ってきていたようだ。
「……まだやっているの? 最近勉強に熱が入りすぎじゃないかしら。くまが出来ているわ。詩を楽しむのもいいけれど、それで体を壊したら楽しくないでしょう」
私は死んでからも人生楽しんでいるけどね~、なんて軽口を言いながらこちらの目の下を指でなぞる。
「これくらいなんともないよ。それよりも、幽々子こそ稽古で疲れているじゃないか。明日も早いから、今のうちに寝ておいたほうがいいよ。」
'死んでいるから大丈夫よ'と言われた。そういう問題ではないと思うが。
「○○は、これに夢中なのね」
幽々子はそっと机に広げた本に視線を向ける。
「詩の勉強は先が見えないけど、それでも楽しくて仕方がない。私はもっともっとこの道を学びたいと思う」
そう返すと、幽々子はなぜか少し寂しそうな表情を浮かべた。





長い沈黙が続く。なんだろう。なんとなく気まずい空気が部屋を包む。
「忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな」
不意に、幽々子が詠み始めた。彼女の声にはとても感情が込められて、まるで創った本人に語らせているように聞こえる。
「ふむ、確かそれは百人一首、いや、拾遺集にあったな。
自分が忘れられてしまう苦しみはへっちゃらだが、愛の誓いを破ってしまったせいであなたに天罰が落ちるかもしれないと惜しまれます……だったっけ」
ちゃんと意味を答えることが出来てちょっぴりいい気持ちになったが、幽々子はなぜか相も変わらず寂しそうな表情を作ったままだ。

「私があなたの前で詩を読んだのはね、○○。あなたが興味を示してくれそうだったからなの。
もしかしたらこれをきっかけに、もっと私に興味を持ってくれるかもしれないと思ったから」
幽々子はいつの間にか俺の隣に座っていた。こちらに寄りかかって肩に頭を乗せてくる。
「でも、そのせいで、また私の事を忘れてしまうことになるのなら……」
囁くように耳元で話すから、なんだかこそばゆい。
反射的に身じろぎしても、お腹に回された腕のせいで動きが取れない。それどころか更に密着する形になってしまう。
「おかしくなっちゃうかも」
お腹に回していた腕を伸ばし、手を私の頭に添えて、幽々子は
「だから○○。できることなら、最後は私の下で死んで頂戴。一人寝が肌寒く感じる、2月ごろに。
そうしたら、それからは。ずっとずっと、一緒に居ましょうね。大好きよ、○○」
そっと口づけをした。

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最終更新:2012年02月18日 15:30