「お客さん終点ですよ」

「ああすまない・・・」

私が寂れた駅を出るころには辺りはしっとりとした闇に包まれていた。

「あのとき以来か・・・・」


私は小学校へ上がるまでの一年間、山間のこの地方に住む伯父の家に預けられていた。
伯父は一族の儀式的な長であり、一族の殆どが都会へ出てしまっても一人残って猟師をしている。
幼い頃、私はこの伯父が好きではなかった。
一人で遊びまわることを決して許してくれなかった。
今ならその理由もわかるが、まだ幼かった私には理解できなかったのだ。

「えぐっえぐっうえぇぇっぇぇぇえぇん!!!!!!!」
泣きじゃくる幼い私と家から持ってきた飛行機の模型。
伯父が近所の忌み事の手伝いに行っている時、私の心の中の悪魔が微笑んだ。

今なら五月蠅く言う伯父もいないのだーわはー

私は飛行機を持って・・・・・山で迷ってしまったのだ。
幾ら叫んでも誰もいない。
その時彼女に出会った。

「?~」

最初私はそれを人形だと思った。
好奇心に負けてソレを触った時だ。

「う~ん?」

「ヒッ!」

その人形が起き出した。

「宴会で紫をBBAと言ったのが悪かったのか・・・・そこの人間ここは何処だ?」

「人形が喋った!!!!!!」

「人形じゃないって・・・ありゃぁ~身体が縮んでる。ってことはココは外界か」

その何者かはリボンの着いた角を触っている。

「それは本物?」

「鬼の角に偽物も本物もあるかい?人間名前は?」

「私は○○・・・です」

「あたしは鬼の伊吹萃香。」

スイカと名乗った鬼は自分の話をしてくれた。
幻想郷と呼ばれる隠れ里の話
宴会で紫ババアをBBAといったら弾幕で吹き飛ばされ、気が着いたら此処に居たこと
どれも信じられない話だったが、寂しさで押しつぶされそうになっていた私にとっては最高の特効薬になった。

「ふ~ん それで大人の話を聞かずに遊びに出て道に迷ったのかい・・・」

「でも・・・・」

「でももへちまのないさ。あたしのような妖怪にとっては○○みたいな馬鹿はいい御馳走さ・・・」

「スイカ・・・嘘だよね?」

「嘘じゃないさ。それにあたしじゃなくても・・・・」

萃香の手が光った瞬間、後ろの何かが倒れる音が響く。
恐る恐る振り向くと・・・

「熊・・・・・・」

「そう熊さ。逃げるすべも戦うすべもない子供が山なんて来るもんじゃない」

「・・・・・」

「さぁ帰った帰った。早く帰らないとホントに喰うよ」

その後、どうやって帰ったのかわからない。
でも寝床についた時でも、萃香のことが頭から離れなかった。

「弟子にしてくれって?」

「うん!」

「だめだめ!遊びじゃなんだ!」

チラッ

「これは伝説の銘酒「鬼殺し」・・・・弟子入りを許可する」

「やったぁ!」

修行は楽しかった。
まるでRPGのレベルアップみたいだった。
でも楽しかった時間は過ぎ・・・・

「てぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!!!」

「よしよしだいぶ身体ができているな」

「ありがとうございます」

「なぁ○○、あたしあんたのことが・・・

ガサッ

「わしの秘蔵の老酒や干し肉が無くなっているからおかしいと思ったら・・・妖怪にたぶらかせおって!!!!」

「伯父さん!」

「○○!離れい!」

伯父さんの手からお札の貼られた短刀が投げられる。

「萃香逃げてぇぇぇl!」

「鬼に憑かれたか・・・・」



僕は伯父にしこたま殴られ、土蔵に閉じ込められた。
伯父さんからは妖気を抜くためと言われた。

「○○起きているかい?」

目を凝らすが何も見えない。

「萃香?」

「これじゃあ見えないかい?じゃあ・・・・」

目の前に萃香が現れた。一糸まとわぬ姿で・・・・
思わず私は目を手で塞ぐ。

「萃香なんで裸?Hだよ!」

「おや?一丁前に興奮していのかい?ココとか・・・」

萃香の手が私の男性自身を撫でる。
手で払いのけようとするが、柱に縛られるので動かせない。

「修行をつけたお礼を貰うよ○○・・・・」

「そこはおしっこするところだよばっちいよぉ」

私は生まれて初めて「女」を知った。

「あたし・・・幻想郷へ帰ろうと思うんだ」

「萃香・・・・」

「○○・・・今じゃなくてもいい!あたしを貰ってくれるかい?」

私は頷いた。

「鬼に嘘はいけないよ?いつか・・・いつか迎えにくるよ○○!」


その後、私は都会に戻った。
此処に戻ってきたのは伯父が猟で熊に襲われ亡くなったので、その喪主を務める為だ。

~今の季節に熊なんて~

~守り刀がボロボロに錆びていたって~

~生きたまま貪り喰われたらしい~

あまり会ったことのない親族がそう噂をしているのを聞いた。

親族が帰った後、私は土蔵にいた。
萃香との情事が嫌がおうにも思い出され、身体が火照るのを感じる。

「やっぱり来てくれたね○○」

振り向くと萃香が立っていた。べっとりとした血を服につけたまま・・・・
その瞳は底の見えない、黒い沼を思わせた。

「結構時間かかっちゃった・・・・あの老いぼれ自身が結界の要だとは思わなかったね」

「萃香・・・・・まさか伯父さんを!」

「殺したさ。当然だろ?じゃなかったらここにいないよ。さあ○○・・・」

「やめろ近寄るな!」

逃げようとするが足が動かない。
見ると、あの日見た小さな萃香が足にまとわりついていた。

「鬼に嘘をついたのかい?ならお仕置きだな・・・・・心配ないさ地下の地獄で死ぬまであたしの相手をしてくれればいいさ」
最終更新:2012年02月18日 15:40