私は何時ものように妖怪の山に侵入してきた人間に剣を向ける。
「そこの人間!ここが何処か知っているんだろうな!即刻退去しなければ・・・・・」
人間が振り向く。
「お疲れ様です!椛さん!」
「○○さんでしたか!申し訳ありません!」
○○さんの帽子に付けられた、忌々しい烏の羽が風に踊る。
「あややや!人里にそんな隠れスポットがあったなんて驚きです!」
「ええ!なんでも普段は地底の
地霊殿に住んでるパン職人で元外来人らしくて、偶にパンの屋台を引いているんだそうです。」
○○さんは妖怪の山で妖怪に襲われているところを私が助けた。
私が気絶した○○さんを介抱するために薬を取りに行ったいる間に「あの鳥頭」が○○さんを「保護」していた。
純真な○○さんはあのパパラッチを命の恩人と思い、パパラッチの助手をしている。
おまけに、「護身術」と称してあのパパラッチに「天狗」になる修行をさせられている。
私が助けなければ・・・・・
「椛!どうしたの?ボーとして?」
○○さんが私の顔を覗きこむ。
顔が熱くなっていくのを感じる。
「風邪なら○○さんが買ってきてくれたお土産も食べられないですね」
ふと見ると見たことのないサンドイッチが並べられていた。
「風邪なら精のつくものを食べれば治るって」
「ありがとうございます○○さん!」
「あなた自分の立場わかっている?」
「はい・・・・」
「○○がいるから言わなかったけどさ、あなた哨戒はどうしたの?」
「はい・・・・」
「いい?○○さんはもうすぐ天狗になるのよ。あなたごときが気軽に話しかけていい相手じゃないのよ?」
ああ、なんて卑しいんだこの牝は
自分で助けたのでもないのに
でもいいことを聞いた
もうすぐ○○さんは「天狗」になるんですね。
なら・・・・・
「椛さん!文さんから聞いたよ風邪ひいたんだって」
「もう少し近寄ってくれませんか○○さん?そう手の届くところまで・・・」
私は注意深く妖力を練り、指先に纏わせる。
「?」
中身の詰まった革袋を貫くような音が響く。
私は指先から○○さんの心臓に直接妖力を注ぐ。
「何で・・・・・」
「お礼をしてもらっているだけですよ・・・・・あの日のね。さあ夜は長いですよ○○さん」
夜が明け光が満ちる頃、妖力弾が私の家を吹き飛ばす。
「・・・・○○さんを返してもらいましょうか?」
「返す?まるで自分のモノのように話しますね。でも・・・・もうあなたのモノじゃない」
半壊した家の奥、荒縄で縛られた全裸の○○が光を写さない瞳で鎮座していた。
そして○○の黒い髪から突き出た耳、力なく垂れた尻尾
「お礼を言いますよ・・・下地を作ってくれた御蔭で問題なく白狼天狗にできました」
「貴様!!!」
「おや?私は人間を天狗にしたまでですよ?それよりも烏天狗とあろうものが下賤な人間と付き合っていたんですか?」
「・・・・・」
「こんなことをして・・・・タダで済むと思うな!」
「どうぞ?私は○○と白狼天狗同士で仲良くしますから。烏天狗とあろうものが白狼天狗と付き合えませんよね?」
「クッ!」
飛んでいく鳥頭を見ながら、私は傍らの○○を見つめる。
「これから色々と面倒なことになるでしょうけど、○○さんと一緒なら地獄でも極楽ですよ
最終更新:2012年02月18日 15:50