○○とまた会った。これで24回目かな。
だんだん○○が通る道がわかるようになって嬉しくなった。
でも○○は私に気付かない。
いつも私がいないみたいに素通りしていく。
勇気を出して声をかけても振り向いてくれなかった。
ねぇ、どうして?


「どうすればいいのかなお姉ちゃん」
私の妹、古明地こいしは無意識を操る程度の持っている。
誰にも存在を認知されず、またその行動を読まれにくくなる能力。
だけど常に気付かれないわけではない。
現に今の私はこいしを認知している。
ということはつまり。
こいしはその◯◯と会う時は自分を無意識の領域に置いているということだ。
嫌われたくなかったから第三の目――心を閉じた。
私の仮説だけれども、こいしはその○○に嫌われるのを恐れているのだろう。
自分の想いを伝えるには心を開く必要がある。
閉じた恋の瞳とはよく言ったものだ。
こいしを守ってきた無意識が、こういう形で仇になるとは思っていなかった。
私はこいしの頭を撫でて慰めた。
この恋がこいしのリハビリになるといい。
自分で心を開けなければ、恐らく成就しないだろう。
たとえそれがどんなに辛いことでも、こいしには負けないでほしい。
……ただ心配なのは、こいしが相変わらずニコニコと笑っていることだった。


25回目。
今までに出したことがない程の大声を出した。
○○には聞こえていないみたいだった。
自分は違う世界にいるような気がしてきた。


28回目。
○○に触れよう。そうすればきっと気付いてくれるはず。
○○が来る。すぐ近くにまで。
触れれば気付いてくれる……触れれば……触れれば。
でも触れたら?
触れたらどうするの。きっと驚く。そうしたら、嫌われる。
嫌われるくらいなら――そんなことになるくらいなら。


また○○を見つけた。30回目。
手を振る。声をかける。
無視されても諦めない。
後ろ姿が地平線に沈むまで頑張った。
でも駄目だった。
「うぐっ……ひっ……っ……」
何だか辛い。苦しい。胸が重い。
何なのこの気持ち。
壊れちゃうよぉ。



自分の力不足を感じた。
今まで無意識に頼って生きてきた罰なのかも知れない。
このまま私は○○と添い遂げることができないのだろうか。
私が想いを伝える前に、もし○○が他の人に取られたら……。
嫌だ。
絶対に。
○○は……取られたくない。
○○には私が告白するんだ。
だから――。
私は○○を無意識の世界に連れ去った。
これで○◯は私以外の誰からも気付かれなくなる。
○○が辛く苦しくなるのは知っているけれど。
どこか遠くに行ってしまう前に。
本当にごめんなさい。
私が全部世話をするから。
私が何でもするから。
私が○○の為に生きるから。
だから待ってて。
いつか必ず迎えに行くからね。

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最終更新:2012年02月18日 16:03