「○○!俺にかまわず行ってくれ!大丈夫だ
キスメと
ヤマメに頼んでロープを張ってある」
「でも・・・・そんな腕で・・・・」
「ははっ!俺は鬼だぜ?こんなの歯が抜けるよりも軽いさ!」
「大丈夫なのか?」
「いいから早く行けって!」
俺は遠ざかる○○の姿を見届けると、失った左手に妖力を集める。
「さあて、色ボケ妖怪共を教育してやるか!」
地獄の旧市街 その通りに一軒のラーメン屋がある。
「おや?見たことない妖怪だな。新入りかい?ならこのラーメンはサービスさ!」
「ん?お前さんも店長と同じ喰い方をすんだな。悪りぃ、酢を入れて食べんのは店長以外には見たことなかったんでな・・・気にしないでくれ・・」
「店長はあんたじゃないかって?俺は代理だよ。店長は○○って人間でな・・・・」
「あいつは外から来た人間で不幸なことに此処に落ちちまって・・・・」
「妖怪に追われていた○○を俺が助けたわけさ。最高だよな!妖怪に襲われているのに鬼に助けを求めるなんてさ」
「○○がお礼に作ってくれたラーメンは最高だったな」
「あいつは自分の店を持つために修行してるって言っていて、それで俺はここでラーメン屋をすることを勧めたんだ。思えばそれがいけなかった・・・」
「あいつの店は人気になって、普段表にでない連中にもラーメンを出前するようなったんだ。そしてあいつらが・・・・」
「君の悪いサトリ妖怪の連中さ!あいつら○○のラーメンよりも○○を気に入っちまった。」
「ある日○○は帰ってこなかった。こんなことをするのはあいつらしかない。俺は奴らの根城に忍び込んだ。」
「○○は丸裸で革の手錠でベットに縛りつけられていた。○○があいつらに何をしたのかは朴念仁な俺でもわかる。俺は○○を助け出して店に戻った」
「○○は泣きながら何があったかを話してくれた。あのサトリ妖怪が外界への帰還について相談したいと○○を呼び出したそうだ。でも嘘だった。」
「姿の見えない何かに殴られ、気が着いたらあの部屋に居たそうだ。そしてあのサトリ妖怪が現れた。」
「○○にはサトリ妖怪の血が混じっている。だからまぐわいを通じて妖力を与えれば同じサトリ妖怪になることができる。」
「ったく!○○はただの人間だってのにな!ただ感が良いだけの!あの色ボケ妖怪共が!」
「俺はあの妖怪共を押しとどめ、○○は地上に出た。だから俺はこの店の店長じゃない。」
「外は寒いからな・・・また来とくれよ!」
外ではピンク色の髪をした少女が彼を待っていた。
「○○さん、親友との再会はどうだったですか?」
○○は無言で能力を解除する。
「便利ですね・・・その幻覚を見せる程度の能力は・・・・」
「お前が俺をこう変えたんじゃねぇか!」
「心外ですね?私は選ばせたんですよ?目の前の友人を見殺しにして地上に戻るか、それとも私と一緒になるかを」
サトリ妖怪 古明池
さとりは○○の手を膨らんだ自らの下腹部へとあてる。
「あなた・・・この子も早くあなたに会いたいと言っているわ。」
「・・・・・・」
「でも甘え過ぎては駄目よ?だって○○は私の物だから・・・・」
さとりは歪んだ笑みを浮かべながら、自らの腹を撫でていた。
○○は夢の残照を見つめた。
あいつはきっとラーメン屋を続けるだろう。
俺が地上へ無事出て外の世界で夢を叶えたと思いながら・・・・
「さあ
地霊殿へ戻りましょう?あなた」
「分かったよ・・・・」
○○とさとりは共に空へ浮かんだ。
○○の胸に鎮座した第三の目は涙とともに「○○の店」をいつまでも見つめていた。
最終更新:2012年03月05日 22:10