私は勤務先の道具屋の主人から、命蓮寺へ届け物を配達するよう言われた。
勤務外であったが、主人の切羽詰まったような表情から私は承諾するよりしかたがなかった。
命蓮寺の参道は綺麗ではあったが、静まり返っていてまるで廃寺のような雰囲気を醸し出していた。
私が呼び鈴を鳴らすと、紫色のグラデーションと金髪の尼僧が出迎え寺の中へ入れてくれた。
尼僧は私を歓迎しているらしく、商品の運び込みを手伝ってくれ夕食を一緒にするようにと言った。

居間では大人が数人座ってもまだ余裕のある大きな炬燵が用意され、その中央の土鍋ではグツグツと煮えたぎりすっかり冷え切った身体を温めてくれた。
既に炬燵では命蓮寺の少女たちが座り、おのおのの隣に見知った男達が座っているのを見つけた。
私は彼らと話したことはなかったが、皆外来人長屋にすむ外来人達だ。
急に来たことの非礼を少女達に詫びたが、誰からの返答はなく男達はただぼぅとした表情だった。
私がその表情を疑問に思っていると先程の尼僧が居間に入ってきて私の傍に座った。

鍋は海鮮鍋で幻想郷では・・・いや外界ですら馴染みのない烏賊や蛸、海老などが入っていた。
少女達は手早く、取り分けるとそれを男達の口に運んでいる。
私がその異様な光景を見ていると尼僧の手には取り分けられた鍋の具があった。
礼を述べ、私がそれを口に運んでいると尼僧は酒を勧めてくれた。
外界帰還を目的とする私にとって、酒を飲む機会はあまりない。
久方ぶりに味わう酒は苦かった。

食事を終えると、人の頭ほどもある饅頭が振舞われた。
良く見るとその饅頭は「博霊の巫女」の顔を冒涜的なまでに戯化したことがわかる。
尼僧が不安になるような意匠を施された包丁で饅頭を切り分けると、「ゆっくりたべていってね!」と声が聞こえた。

会食を終えると少女達は傍らの男達の手を取り、一人また一人と寺の奥へと消えていった。
もう居間に居るのは私と尼僧だけ。
尼僧は少女達と同じように私の手を取ると一緒に寺の奥へと進んでいった。

「ははっ!君がこんなにもふもふ好きだとは思っていなかったよ!これからは同士達と私とでいつまでも満足させてあげるよ!」

「つい気持ち良くって無理をしてしまいました!大丈夫折れていません!◦毘沙門天に賭けて折れてません!」

尼僧の手に連れられて歩くうちにいたるところから、濡れた何かが這いずる音、柔らかい物を打ちつける音が響く。
不意に尼僧が立ち止り、目の前の扉が音もなく開いた。
ピンク色の間接照明に照らし出されたもの
男女和合のためのベット、そして口では言い表せない用途に使用される禍々しい冒神的な道具が用意されていた。
私は尼僧の手を振り払おうとし、その服に手をかけてしまった。
衣服から現れたものを私は一生忘れないだろう。
豊かな肢体を包む、艶やかな黒革の革装束。
尼僧は頬を赤らめると私を部屋に引きずり込んだ。


暗い、闇よりも暗い中に私は居た。
叫んでも、私の口からは野獣のような声しか出なかった。
ふいに浮かび上がるような感覚を感じる。
「高齢出産なのに良く頑張ったわね!3kgの元気な男の子ですよ!」


提出課題 「家族のこと」
     3ねん⑨くみ  聖 ○○

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最終更新:2012年03月05日 22:44