伽の後の醒めた頭。
身体はまだ熱くて、確かに生きていると感じられる。

伸ばした腕の先には、愛しいひとの体温。
私の白く、長い髪が彼に纏わり付いて、蜘蛛にでもなった気分だった。

抱き合って、身体を重ねて、だけど、まだ隙間を埋めるには足りなくて。

「○○…お願い。」

首の動きだけの、無言の肯定。
私はもう一度押し倒され、やがて愛しいひとの腕が伸びてくる。

髪を撫でるでも、抱き寄せるでも無く、その腕は、真っ直ぐに私の頚へと掛かる。

「ぐ…が、はぁっ…!」

少しずつ、噛み締めるように指が力を増して、皮膚が軋みを上げていく。
ぼやける視界の中、薄闇に浮かぶ彼は、涙を流していた。

「妹紅…。」

力無く私を呼ぶ聲は、私が何より愛する声。

伽の後に一度彼の手で事切れるのは、私が望んだ事。
私の生命の昂りも終わりも、全て彼の手に依るモノであって欲しい。
私を焦がす感覚と、私を終わらせる感覚とで、彼の中を埋めてしまいたい。

二つの欲望を、全て埋めてしまいたいが為に。
心の隙間ですら、私で埋めてしまいたいが故に。

やがて眠るように私は事切れて、目覚めるように私は生き返る。
あなたの痕は、この首には残ってくれないから。
だから、何度でも刻むの。

心の首に、互いの付けた痕を。
私に、そしてあなたに。

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最終更新:2012年03月12日 19:22