蝋燭の光が闇を照らす
床には複雑な図形が描かれ、それは鼓動するかのように明滅を繰り返していた。
図形の中心には全裸の青年が寝かせられていた
そして青年に跨り腰をふる少女
燃えるように輝く金色の髪を振り乱しながら・・・

アリス・・・なんでこんなことをしたんだ?」

先程の青年が少女を見つめる。
その瞳には怒りはなく、愛する者に裏切られた悲しみが滲んでいた。

「人の身で愛し続ける・・・・あなたはそれでもいいかもしれない。でもっ!!!」

アリスは青年を抱きしめる。
その花弁からは破瓜の血が滴っていた。

「○○と恋人になって一緒に生活して、幸せで幸せで・・・・だから怖いの!!!あなたが私を置いていってしまうのが怖いの!」
「だからって魔族にしなくてもいいじゃないか!」
「○○はずっと一緒に居たくないの?」
「違う!俺は・・・」
「ならなんで喜んでくれないの!」
「・・・・俺は永遠を愛し続ける自身が無いんだ・・・・」
「そう・・・・出て行って!!!!!!」
アリス・・・」
「出て行きなさいよ!!!!!!!!」


人里のとある喫茶店
○○が店主のこの喫茶店は、手ごろな価格で本格的なケーキやコーヒーを楽しめるとあって人気の店だった。

「邪魔するぜ」
魔理沙か・・・そのまま180度回転して出て行ってくれ」
「客にそんな態度をしていいのか?」
「普通の客はお金を払う客だ!お前はいつも怪しげなキノコで支払おうとするじゃないか」
「一口食べれば好みの淫夢を見れるキノコなんかは里でも人気あるのにな」
「少なくても俺は必要じゃない!」
「恋人が実家に帰って寂しいと思って持ってきたんだけどな・・・・」
「・・・冗談でも言っていいことと悪いことがあるぞ」

アリスと別れたあの日からしばらくたって、アリスから荷物が届いた。
アリスの家に置いてきた俺の私物と大きな箱。
添えられた手紙には魔界の実家に帰ることになったとだけ書かれていた。
大きな箱の中には子供くらいの大きさがある人形が一体入っていた。

「これがアリスの置き土産か・・・」

魔理沙は揺り椅子に座った人形を見つめる。
青いリボンをあしらったヘッドドレス、青いドレス
それを見つめる魔理沙は知らず知らずのうちに八卦炉をポケットの中で握りしめていた。

「コーヒーでも飲もうかと思ったけど、そんな気分じゃないぜ・・・・」
「ん?珍しいな、何もたからずに出て行くなんて」
「うるさい!」

魔理沙が強引にドアを閉める音が響いていた。





魔法の森 霧雨魔法店

店主の霧雨魔理沙はベットに横になっていた。
傍らには○○と一緒に撮った写真が一枚。
はにかんだ笑みを浮かべる魔理沙と○○、その傍らには誰か立っていたのか分からないほど切りつけられていた。

「ん……んふ…………ぁっ……んくぅ……」

ベットの中で花弁に枕をあてがい快楽を貪る。
魔理沙は夢に浸っていた。
アリスに棄てられた○○が自分を選んでくれることを
このベットの上で自分を「女」にしてくれることを

「はぁはぁはぁぁぁぁぁぁ!」

絶頂の後にやってきたのは、誰ひとりおかえりと言ってくれない寒々としたいつもの部屋だけだった。

魔理沙が○○と出会ったのはアリスに誘われてだった。
人里ではコーヒーを嗜むことは少ない。
最初にコーヒーを見た時、墨汁をお湯で割ったものと思ったくらいだ。
○○に砂糖を勧められた時なんかは、恥ずかしさのあまりマスタースパークを撃ったのはいい思い出だ。
魔理沙はあまり人里へ行く頻度は余りなかった。
実家との折り合いが悪いこともあるが、里人の態度が気に入らないこともある。
里ではただ普通に過ごしていても、その態度に妖怪と接するような畏れがあった。
でも、○○はそんなことを気にすることはなかった。
森近霖之助と同じ、自分を色眼鏡で見ることが無い人物だ。
コーヒーをたかりに来て、○○に怒られる日々。
ずっとこういった日々が続いてくれると思っていた。
ある日、魔理沙は見てしまった。
閉店した喫茶店の中で○○とアリスが抱き合い、キスしていた。
○○が魔理沙の特別になることはない。
だから、アリスと○○が別れたことを聞いた時は狂喜した。
再びあの日々が戻ってきてくれると。
だが、蓋を開ければ○○はアリスのモノのままだ。
アリスから送られた「昔のアリス」そっくりの人形を大切にする○○。
あれがあるから・・・
アレガアルカラ!

「そうさ・・・・振られた女の人形なんて贈られたって迷惑なだけだよな○○」

魔理紗が八卦炉を握りしめ○○の喫茶店へ向かおうとする。
だが・・・・

「?!」

魔理沙の身体が動かなくなる。
よく見ると髪の毛よりも細い糸が纏わりついている。

~ シャンハーイ ~

魔理沙が後ろを振り向くと同時に爆風が彼女を包みこんだ。






開店前の喫茶店で○○はアリスに贈られた人形の髪を梳いていた。
アリスと別れた日の翌日、○○の喫茶店に大きな荷物が届けられた。
中に入っていたのはアリスそっくりの人形。
そして、実家に帰るとだけ書かれていた手紙だけ。
怒りにまかせて人形を壊そうとさえ思った。
でも、できなかった。
アリスを許せない気持ちは消えていない。

「俺は駄目な男さ・・・・」

長年、人外相手の商売をしているといろいろと知ることがある。
人外達と愛し合い、そして人間を辞めていった外来人。
彼らは以前と全く変わらないように見えるが、本質は大きく変わっていった。
そう人喰いへと・・・

アリスと付き合う際、人として共に生きることを誓ったのはそういういきさつだった。

「お互いが傷つくなら・・・・愛することがこんなにつらいなら、もう恋なんて・・・・」

その夜
喫茶店のニ階、○○の自室
アリスと同棲していた時には仕事の合間の休憩以外では使用していなかった。
○○が眠れぬ夜を過ごしていると、不意に懐かしい香りが漂ってきた。
ドアがゆっくりと開いていき、その人物が金色の髪を揺らしながら入ってくる。

アリス・・・・実家に帰ったんじゃ」

見慣れない青いドレスを着たアリスは○○を抱きしめた

「○○・・・ごめんね。あなたの気持を知らないで」

二人は一つに混じり合った。


翌朝、アリスの姿は何処にもなかった。

「夢だったか・・・・」

○○をあの人形が見つめていた。

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最終更新:2024年08月01日 14:01