俺は階段を上っていた
なぜ上るのか
なぜ此処に居るのか
上った先に何があるのか
そんな疑問を感じるが、足はまるで自らの意思を持っているかのように一歩一歩確実に石の階段を上っていた
ふと壁に設置された窓が目に入る
窓の外にはどこまでも広がる草原
幼いころの自分を思い出した
― 実家には広い草原なんてなくて・・・親父の里で遊ぶのが夏休みの楽しみだったっけ ―
― そうそう!親父にハーフサイズのカメラを貰って毎日写真を撮っていた ―
足を止めてずっと、その懐かしい草原を見ていたかったが無情にも過ぎ去っていった
しばらく歩いてくと、また窓が現れた
窓の外には山の中にポツンとあるコンクリート建築が目に入る
擦り切れて霞んだ看板には「××芸術大学 分校」と微かに読めた
― 新聞の写真大賞で優勝をとって・・・・下手に自信を持って、この大学に入った ―
― 行ってみたら俺みたいな奴がゴロゴロしていて・・・・ ―
― 荒れたな・・・・ ―
― 酒飲んで、合コン行って・・・女だと思ったらホモでラブホからパン一で逃げ出したりな ―
― でも写真は捨てられなかった ―
良くも悪くも色々な思い出のある大学を後にした
俺は目を瞑った
次に来るのは・・・・
荒れ果てた神社
彼・・・○○が幻想へとなる切っ掛けとなった場所
― ああ やっぱりだ ―
― 大学を出た俺は零細出版社のカメラマンになった ―
― 夢は叶った・・・四六時中女の裸をとる仕事とは思わなかったがな ―
― 仕事が落ち着いて俺はバイクに乗って、撮影旅行に出かけるようになった ―
― そして・・・・ ―
何かに掴まれるような感覚が俺を襲う
振り返るが何もない
ただ闇が広がるだけだ
~ オマエハワタシノモノダ ~
振り切る様により強く足を踏み出す
~ コドクニタエラレナイ ~
どうしてアイツを撮りたいと思ったんだろう
異性としての好意?
いや・・・・
アイツの孤独を癒したいと思ったんだ
つくづく俺は馬鹿だ
ずっと孤独の中に生きていた彼女が孤独を嫌ったら?
きっとどんな方法を使っても、孤独から逃げようとするだろう
こういう風に・・・・
窓の外に広がる竹林と薄汚れた小屋
河童達に頼んだ現像が終わり、人里に頼んだ額装を終えた「彼女の写真」
彼女は喜んで、俺と彼女はささやかな酒宴を開いた
ぐでんぐでんに酔っぱらった俺は口に入っているモノの正体を知らなかった
知ったのは・・・・
「○○!しっかりしてくれ!私だ!妹紅だ!!!」
彼女が俺の頬を容赦なくビンタする
「・・・・死ぬわけないじゃねえか俺が」
「いつもより長くて・・・本当に死んだって思って・・・」
彼女は泣いていた
俺が彼女達の「殺し合い」に巻き込まれるのはこれが初めてではない
俺が不老不死であると知ったのは、巻き込まれて首が身体から泣き別れしたことで初めて知ったのだ
「大丈夫だ。夢を見ていただけだ」
「そう・・・・帰ろうか○○」
あの塔の頂上に何があるのか
何が待っているのか
俺にはわからない
だが、俺があの塔を登りきることはないだろう
俺は彼女とこれからも終わりのない塔を上り続けるだろう
俺と彼女、二人が擦り切れるまで・・・・
最終更新:2012年03月16日 12:21