霊夢/13スレ/899-900
俺の名前は○○。
近くの山を散策していたはずが、
気がつくと見知らぬ神社の前に立っていた。
「あら、普通の人間が来るなんて珍しいわね」
神社に入ると、十五、六ほどの年であろう少女が話しかけてきた。
巫女装束を着て、箒で地面の枯葉を払っている。
「・・・別に、泊めてもいいけど、手伝いしなさいよ」
俺は知らない土地を何の情報もなしに歩くほど馬鹿ではない。
しばらくこの神社に泊めてもらうことにした。
◆
この神社に泊まっているうちに、様々なことがわかった。
ここは幻想郷という、自分のいた世界とは違う場所だということ。
この世界は、妖怪や魔法が実在する世界だということ。
神社に泊めてくれた彼女、霊夢はこの世界の実質的な管理者で、
他を圧倒する力を持っているということ。
そして彼女は、ずっと独りだということ。
俺はそれらを知って、彼女にできる限り優しく接するようにした。
◆
「え、出て行くって、本当・・・?」
それから二月ほど経ってから、俺は元の世界に帰りたいと言った。
「そんな、ここの生活の何が不満なの!?」
何も自分は本当に帰りたいわけでは無かった。
食料には困らないし、外の世界と違って一日の大半を
仕事に費やすようなことはしなくていい。
「貴方がいないと、わたし、もう・・・!」
俺が元の世界に帰りたいと言ったのは、
この台詞を彼女から聞きたかったからだ。
俺の腕にしがみついて泣きじゃくる彼女を抱きしめて、
そんなに好いてくれているとは知らなかった、
それなら、ずっとここに居てもいいと言うと、
今までの泣き顔が嘘のように明るくなり、
ずっと一緒に暮らそうと言い放つと、
ブツブツとこれからの計画のような独り言を始めた。
こいつは使えるな、と心の中で思った。
「やだっ・・・私のこと嫌いにならないでぇ・・・!」
霊夢を利用するようになってから、
まるでこの世界の神にでもなったような気分だ。
気に入らない奴を彼女に言えばそいつは俺に這い蹲り、
食べたいものがあれば、どんな無茶な注文でも、
あらゆる手段を使って必ず霊夢が用意してくれる。
少し度が過ぎると霊夢も俺に注意しようとするが、
外に帰るなどと言って脅しをかければ、
上みたいな台詞を吐きながら絶対に俺の言うことを聞いてくれる。
今まで優しくしてきたのも、全てこのためだった。
もはや霊夢は、俺の操り人形と化した。
◆
「おい、霊夢をたぶらかすのもいい加減にしろ」
或る日、霊夢と散歩をしていると空から女の子が降ってきた。
金髪の魔法使いで、黒い衣装に身を包んでいる。
確か、
魔理沙とか言っただろうか。
「私がたぶらかされてるって、なに言ってるのよ」
「そうだろ、こんな最低野郎と散歩なんて!」
最低野郎とは、俺の事だろうか。
この女、誰に口をきいているのか分かっているのか?
「こいつはお前の事を騙して良い様に使ってるだけの
最低最悪の屑野郎だって言ってるんだ!」
「これ以上○○を悪く言わないでっ!」
とうとう霊夢が我慢の限界に達したらしい。
「あんたみたいな女に○○の何が分かるって言うの!?
私に心から優しく接してくれて、
私のことを一番心配してくれて、
私を一番愛してくれている○○の何がっ!」
俺の考えとまるっきり反対の事を叫ぶ彼女は、
なんだかとても滑稽に見えた。
「霊夢、目を覚ませ、こいつはお前の害・・・」
それが、奴の最期の言葉だった。
霊夢が袖から突き刺した針は、正確に奴の心臓を貫いていた。
「・・・さぁ、○○、散歩をしましょう?」
このとき俺は確信した。
この世界の神は、まさしく俺なのだと。
◆
「ふふっ、これで、ずっと一緒・・・」
俺は彼女に頼んで、蓬莱人の肝を取ってきてもらった。
これを食べれば、不老不死になるらしい。
これで俺は、永久に老いることも死ぬことも無く、
彼女を使ってこの世界の頂点に君臨できる。
我侭を通すための武器として。
性処理のための玩具として。
単純で都合の良い召使として。
今日も俺は、彼女を利用する。
感想
最終更新:2019年02月09日 18:45