冬場は何もする事がない、なんて感じてしまうのは私だけだろうか。
雪で往来が閉ざされ、訪れる者が極端に減った紅魔館。
それでもすべき事は色々ある。除雪、漏水の有無、館内の見回りと保守。
それは普段通りの仕事。他の季節と同じ。なのに、周りが雪で閉ざされているだけでこうも感じが異なるのか。
寒々とした自分の部屋に入る。ベットが膨らんでいるし、室温も低いので暖炉に火を入れて温める。
全く、それなりに寒いのに我慢強い事だ。理由を聞いてみたら、別の熱が加わると温もりが感じられないとか。
小さなポットに湯とミルクをかける。ミルクは窓際に置いておくと自然冷蔵庫な感じで全然劣化しない。
幾分暖まったお湯の半分を2つのティーカップに注ぐ。ちらりとベットを見ると、膨らみが消えている。
能力を考えれば納得は出来る。身体が少しジメジメするのは、ホッコリする程布団の中で蒸し状態を楽しんでいたからか。
そんな状態でベタベタ触られるのはちょっと嫌だ。嫌だけど自重しないのが彼女なのでその辺は妥協。
彼女は意外にシャイだ。少なくとも私の前ではちょっとアレな程シャイだ。
普段あれ程堂々としていて、すまし顔なのに。私のこの部屋に限っては。
ペタンペタンと音を立てながらスリッパを引き摺ってティーセットを机の上に並べる。
いつの間にか履き替えさせられた。部屋の隅から物凄い吸引音が聞こえる。
そう言うのは感心しない、普通に抱き付いても良いんだよ、と言ったのにと茶葉を入れながら考える。
変に恥ずかしがり屋なのに、変に偏執で大胆という歪さ。
お湯を張った鍋に茶葉を投入し蓋をして蒸らし、色好く香りが出たらミルクを投入。
若干粘りが出てたでミルク割りだけではないと思うが、まぁ、飲むのは私と彼女だけなのでそれで良いだろう。
再度飲み頃の温かさまで加熱したら、茶漉しで漉して温めたカップに注ぐ。

「さ、温かいミルクティーだよ咲夜。君が淹れたのに比べれば物足りないだろうが、身体を温めるには丁度良いはずだ」

席へ既に座り、クッキーを銜えて「んー」とこちらへ突きだしつつ鼻血を流している瀟洒なメイド。
取り敢えずミルクティーを机に置き、クッキーを銜えた後唇の方も蹂躙しておく。
この辺、先手を打たないとベットに押し込まれ、折角のミルクティーが冷えてしまう事になりかねない。
彼女の愛情の示し方と貪欲さは知っているが、お茶を飲む時は粛々とあらねばならない。

「さ、飲み頃を過ごしたら残念な事になる。君のクッキーを楽しみながら飲もうじゃないか」

唇を半開きにして惚けている彼女の肩を優しく叩いて椅子に座り、私はミルクティーを一口飲んだ。
うん、我ながら出来は良い。でも、やっぱり咲夜の淹れた愛情タップリのお茶が最高だ。毛とか血が入ってなければ尚良しだけどね。

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最終更新:2012年07月05日 23:46