或る男と人里の風物詩


私の名は○○
妻である藤原妹紅の愛を受け入れともに永遠を生きる元外来人である
今日は私が趣味で作っている薬草酒を人里へ卸しに来たところだ
正直蓬莱人である私達にとっては食事はさほど重要ではない
飢えて死ぬことがないからだ
とはいえ、定期的に食事を用意しないと人であったことを忘れ、本当の化け物へと変化してしまうのではないかと恐れている
まあ、妖力も魔力ももたない私ができることは日々食事の準備をし、彼女が人らしく生きれるよう彼女を愛しつづけることだけなのだが

人里につくと異様な雰囲気に包まれていた
唯一、人の安全が守られている場所である人里は活気にあふれている
しかし今はいつも以上に活気があふれていた


普段お守りや札を売り歩くことのない強欲巫女が空からお札やお守りを降らせている

広場では魔法の森の肉人形使いが夫という名の肉人形と一緒に自分をモデルにしたと思われる人形で人形劇を演じていた
何故か敵の魔王は強欲巫女そっくりだったが

出店ではモノクロ泥棒がどう見ても毒キノコのようなキノコを売っていた
本人いわく、最高のトリップができるそうだ
私が薬効について詳しく聞こうとするが、「□□にお水をあげなきゃ・・・」とつぶやいて店をたたんで魔法の森へと飛んで行った


私がこれらの催しモノをみていると頭まですっぽりと黒いローブに包んだ男にぶつかった
私が非礼を詫びると、男は無言で何かの紙を手渡した
それを見るとこの騒ぎが何なのか知ることができた

「東方人気投票」

噂には聞いている
気性の荒い伴侶達は自分の順位が少しでも下がったら、夫の愛が足りないからと「愛の再確認」という名の凌辱を行う
いくら人外に改造されてもその行為がどれくらい過酷かは想像がつく
おそらく、彼も「夫」の一人なのだろう
私は幻想入り以来、手放していないガラスペンを竹筒から取り出し男の指定する名前に丸をつけた

「レミリア・スカーレット」と・・・

男は丁寧に礼をするといずこへと消えていった
彼は一言も話さなかった
いや、話せなかった
男の顔にはクロム製の口枷が嵌められていたのだ
彼も戦っているのだ
血の乾きに身を委ねたら化け物になってしまう
だからこそ、口枷をしているのだ
静かなる決闘を行う男に私は無言の敬意を払った。

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最終更新:2012年07月06日 00:02