我ながら色々ツッコミ所があるとは思うがそれでも投下
大昔、京の御所に謎の黒雲が現れ、不気味な鳴き声が響いた。
今上が体調を崩す一大事となった為、弓の名手たる武士に怪異の退治を命じた。
若武士が1人屋根に昇って様子を伺っていると、黒雲が集い始め鳴き声が聞こえるではないか。
「ぬぇーん、ぬぇえええええん」
「……そこに居るのは誰ぞ。答えい」
「ぬえ?」
其処にいたのは何とも奇怪な存在だった。区別が付かない、何がなんだか解らない。
取り敢えず弓で撃とうかとは思ったものの、返事をしたので取り敢えず此処で何をしているか武士は問うてみた。
「ぬえ、ぬえぬえ、ぬえええええ、ぬえっ」
その怪異が言うには、己の存在が解らないという。どうして己は正体不明な存在なのか悩んで嘆き悲しんでいたという。
若武士は取り敢えず提案してみた。自分の名前を定めてみたらどうかと。
名前がないから、正体不明なんじゃないかと。
「そうじゃな、お主の名は……ぬえ、と言うのはどうじゃ?」
「ぬえっ!?」
「ああ、そうじゃ。良い名前じゃろ?」
実際はぬえぬえ言っているのを聞いて即興で決めた名前ではあるが、妖怪は酷く気に入った様だった。
名前を得た所為か、急激に姿と知性を手に入れたらしく、ぬえと呼ばれるようになった翼を持つ少女はニヤリと嗤った。
しかし、その後もぬえは何故か宮中で怪異を及ぼし続けた為、名前を与えた若武者によって討ち取られる事となる。
心臓を撃ち抜かれた鵺は再びニヤリと嗤うと、若武者に抱き付き唇を奪った後耳元でこう言い残した。
「これが本当の心を奪われたって事だね。ズキューン……ガクッ」
しかし、これで終わりでは無かった。
舟で流されたぬえは再び復活し、得物を弓から鍬へと持ち替えた若武者と京都の十字路で戦う事になるのである。
その後も怪異を起こし続け、若武者が年老いた隠居になり、死ぬまで付きまとったという。
「……と言うのが、君の前世の話であり、君と私の馴れ初めなんだ。彼の魂を追い続けた私が言うんだから間違いない」
「……ああ、左様で」
某寺のぬえの部屋。
確かに弓道部でエースやっていた事はあるが、まさかそんな前世の因果があったとは。
だからって、UFO状態でこの郷に拉致するのはどうかなぁって思うんだけどさぁ。
「拉致は昔からよくやってたからね。平安京で拉致すると君が直ぐ飛んできて追いかけてきたから嬉しかったよぉ」
俺の胸の上で顔をすりすりしているぬえの顔は凄く幸せそうだ。
「転生するまでずっと待っていたんだからね……私の名前を付けてくれた責任、取って貰うからね」
「付けたら責任取らせるのかよ!?」
「うん、君の前世の好みな女性が実態化したのが私だし」
「俺の責任かよー!!」
最終更新:2013年05月29日 14:35