名無しの涙


チルノちゃんはいつも彼を待っている
森の向こうに消えた男の人を
もう戻ってくることはないのに
思い出が擦り消えてもチルノちゃんは忘れない
自分に名前を付けてくれた男の人を

私は弱い
恋した外来人がこの幻想郷に残るって聞いて喜んじゃった
バカだよね
普通の男の人が私達のような子供を愛してくれるわけないってのに
私見ちゃったんだ
霧の湖の紅い館で赤い髪の背の高い女の人と一緒に門に立っているのを
夜に二人が同じ部屋に消えるのを

辛いよ悲しいよ
だから・・・終わらせるね
私は妖精
「一回休み」になれば全て忘れる
きっと私に名前が無いのは「以前」の私も恋を実らせることができなかったんでしょう
私はチルノちゃんみたいに強くないから
戻ってくることを待てる程無邪気じゃないから


「大ちゃん?やっぱり大ちゃんだ!!!」

「あなたは?」

「アタイを忘れちゃったの?アタイ、チルノよ」

「ごめんなさい・・・・一回休みになってみたみたいで」

「アンタの名前は大妖精。この霧の湖で妖精のまとめ役をしていて、アタイの親友!!」

「そう・・よろしくねチルノちゃん」


二人の背後
枯れた木の横
倒れた踏み台
枝から垂らされた結び目の作られた縄が、湖からの風に吹かれて踊っていた。

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最終更新:2012年07月08日 14:05