○○は我慢が出来ぬ。
とくに、取るに足らない疑問を覚えた時、それは顕著になる。
他人から見ればどうでもいいようなことが、
○○の自制心は夏場のシャーベットよりも儚くなる。
覚えた疑問をどうしても解消しなくては満足におやつも食べられなくなる程
なのだから、その駄目っぷり加減がうかがいしれる。
そんな○○が覚えた本日の疑問。
アリスは恋愛経験があるのか否かである。
自称都会派魔法使いというぐらいなのだから、
それなりにハイカラな世界を知っているのは想像するまでもない。
どうあがいても可愛い、と里の男連中から言われるぐらいだ。
何度か彼女と世間話したことがある○○の目から見ても、
アリスは可愛いと胸を張って言える少女である。
あれほどの美貌であるのだから、男の一人や二人いたとしてもおかしくない。それどころか、夜な夜な恋人とあんなことやこんなことしていても不思議ではない。
里の男連中から、笑ったところを見たことが無いと言われたが、
彼は知っている。アリスは、笑った時が一番かわいいことを。
人づきあいを避ける彼女だが、話をすれば情熱的で、
優しい面を見せる彼女のことだ。上手く煽てれば、
彼女の作り方というやつを伝授してもらえるかもしれない。
それこそ一夜限りの行きずりというやつも熟知しているかもしれない。
頼み込めば、おっぱいの一つや二つ揉ませてくれるやもしれん。
いや、それは趣旨から外れてしまう。
アリスから頂いた対妖怪用自動防御人形『英吉利』を護衛にして、
○○は彼女が住まう館へと走り出した。
その日を最後に、○○の消息は途絶えた。
○○の胸に抱かれていた人形が、不気味に笑っているのを見た、
という子供の証言があったが、それが大人の耳に入ることは無かった。
『最近、アリスが家から出てきてくれないんだ。忍び込もうにも、
前とは比べ物にならないぐらいに警備が厳重になっているから、
覗くのも無理』と巫女に零す、金髪の少女の姿が人里で見かけられるようになったのは、
○○が消息を絶ってから20日後のことであった。
最終更新:2012年07月16日 23:46