○○は我慢が出来ぬ。
とくに、取るに足らない疑問を覚えた時、それは顕著になる。
他人から見ればどうでもいいようなことが、
○○の自制心は熱したポップコーンのように弾けてしまう。
覚えた疑問をどうしても解消しなくては、
落ち着いてトイレも出来ない有様なのだから、
残念な○○の頭がうかがいしれる。
 そんな○○が覚えた本日の疑問。
 十六夜咲夜は偽乳か否か、である。
 里の男連中曰く、メイド服の胸元を押し上げる部分の大きさが、
ときどき違うらしい。もうその時点で答えは見えているが、この話には続きがある。
 命知らずにも咲夜の着替えを除いた里人の一人が、
たわわに実った咲夜の胸を確認したらしい。その里人は後日、
全身を滅多刺しにされて亡くなったので、それが狂言なのか真実なのか、彼には分からない。
 おかげで『汚された』と泣きわめく咲夜を慰める羽目になったのだが、
それは今は重要ではない。思い返せば、その時の彼女の胸は大きかったり
小さかったり、あやふやではっきり覚えていない。
 何度か個人的に紅茶をご馳走される程度の仲とはいえ、面と向かって
『あなたのオッパイは生乳ですか?』と聞けば、いくら○○と言えど命が危険である。
 紅魔館門番である美鈴に尋ねようにも、話しかけるよりも早く、
背後に姿を現した咲夜によって客間に案内されてしまうので、
満足に情報収集も出来ない。紅魔館の誰かに尋ねようにも、
その都度咲夜がどこからともなく現れて有耶無耶にされてしまううえに、
なぜか憤怒の表情を話し相手に向けるせいで、紅魔館の連中から避けられる有様だ。
 最近では里の連中からも避けられるようになってしまい、
満足に外も出歩けない。まあ、それ自体は咲夜が食事を用意してくれるので、
困ってはいない。ただ、咲夜の作る食事はなんというか、
磯臭いというか、生臭いときがあるのが難点だが。
 閑話休題。
 とにかく、今日も咲夜は食事の用意をしにやってくる。その時に聞こう。


 その夜を最後に、○○の声を聞いたものはいない。
『なんだか隣の部屋から喘ぎ声が聞こえてきてウルサイ』
と吸血鬼の妹が部屋を変えるよう姉に申し出たのは、それから15日後のことであった。

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最終更新:2012年07月16日 23:45