パープルヘアーはむっつり。異論は認める
図書館の午後
「館長!今日の入荷分の確認終わりました!」
「ありがとう○○」
読んでいた金瓶梅(48手図解付き)から顔をあげ、司書見習いの○○に声をかける。
私が館長を務める、ココ「ヴワル魔法大図書館」には
小悪魔という主席司書と司書見習いの○○という外来人の青年がいる。
正直、人間は魔法使いや悪魔にも劣る。
とはいえ、魔法書の中には特定の男性にしか反応しない代物もある。
だからこそ彼のような司書見習いが必要なのだ。
先日などは・・・
「尻を貸そう」「これが私のドミナントだ」「やらないか」
「弱王」と呼ばれる戦士の怨念のこもった日記を○○がうっかり開いてしまって、バケツのような物を被った筋骨隆々の男性に追いかけまわされることになったりした。
補足するが、これの怨念は男性のみをターゲットにしているようで私や小悪魔には目もくれなかったことを追記する。
肌色の革で装丁された一冊の本
私はその表紙に舌をあてがう
微かに本が震える
ページを開くと活字が白い紙の中を泳いでいた
― なぜこんな目に遭わせるんだ ―
― 好きだったのに・・・ ―
文字が文を作る
「私も好きだったわ・・・でも貴方の言葉を素直に信じられるほど私は若くない」
― 殺してくれ ―
「ええ。私が死んだ時には貴方も一緒に火葬してもらうよう遺書は書いてあるわ。ずっと一緒よ○○」
「館長?どうしたんですか?口から涎が・・・」
「はっ!私としたことが、ついイケナイトリップをしてしまった」
「そろそろお昼ですね。咲夜さんを呼んでお昼を用意してもらいますか?」
「そうよ・・・そうよね。お腹が空いて涎が出ただけよ・・ほほほ」
「?梅干しの本ですかそれ?金瓶梅って」
「そうよ!そう!だから大丈夫よ!!」
私は一応は居候という身分であり、その部下である○○も同じ扱いとなっている。
とはいっても、彼が
レミリアやフランと話すことはなくメイド長や門番、メイド妖精と話すことが多い。
特に、今月から入った金髪のメイド妖精とはかなり仲が良いようだ。
「なんだいサニ―(仮)。お願いって?」
「ごめんなさい・・・・こうしないと一回休みだって・・・」
「え?」
メイド妖精が放った弾幕に倒れる○○
「ここは?」
何処かの地下室
湿った空気が○○を包む
彼はそこから出ていこうとするが・・・
「何で亀甲縛り!なんでレザーボンテージ!しかもTバック」
「起きたわね・・・・」
「館長もなんでボンテージ」
「調教するのよ。あなたが汚らしい牝虫にうつつを抜かさないようにね・・・」
「ああ、そうよ、もっとよ、○○っ!この雄豚っ!」
「あの~館長?そんなにローストポークのサンドイッチが欲しいなら僕の分もどうですか・・・・」
「は?!」
その後、昼食会は特に変わりなく過ぎて行った。
「では館長お先です」
「ええ。また明日」
呪符の詰まった散弾をソードオフショットガンに装填し終えた○○が外套を羽織り、一日の仕事を終えて帰宅する。
本当はこの紅魔館に住んで欲しいが、やはり警戒されているようだ。
それは追々クリア―することにしよう。
時間はたっぷりある。
現に、○○の外套には妖怪避けと一緒に寿命凍結の術式が組み込まれているのだから。
「○○様!」
「咲夜さんか。僕の事は○○でいいんですよ」
「でも・・・あなたは
パチュリー様の部下だし・・・」
「僕はただの人間ですよ。咲夜さんと同じ」
「○○様・・・・」
咲夜は○○に紙袋を手渡す。
中にはローストポークのサンドイッチと暖かな紅茶を入れた魔法瓶が入っていた。
「昼食用のサンドイッチが余ったのでよろしければ・・・」
「ありがとう!咲夜さん!」
「紅茶は特製スパイスを加えたブレンドで、飲みなれないかもしれませんがとっても健康にいいんですよ。少し飲んでみては?」
「何か変わった匂いがするけど暖かくておいしいよ」
「そうですか!毎日用意しますね」
無邪気に笑う○○は彼女が歪んだ笑みを浮かべていることに気付くことはなかった。
最終更新:2012年07月17日 01:17