「ききなさいフラン。新しい玩具よ。」
そう言って
フランドールの前に一人の人間がだされる。
口を縛られもごもしている男を眺め、これは滑稽とばかりにずるずると引きずっていくフランドール。
「…さよなら○○。死なないでね…。」
レミリアは小さく呟き、咲夜と共に外へ旅立った。
「…人間、ねえねえ!あなたは退屈な私を楽しませる為に此処にきたのよね?」
フランドールは口を歪ませ笑い、かくんと膝を折り床座った。
「…お姉様の命令でしょ?あ~ぁ、私と真剣に遊んで、喋ってくれる人はいないのかな…」
フランは人形を壊す遊びが好きだ。
だが、それは美しい物でこそ映える。それは、壊して壊して壊した結果気付いた事である。
今のフランは何でもかんでも壊したい訳では無い。自分に少し情を持った奴を壊したいわけである。
自分興味無い奴を壊しても面白く無い。
「もごもごもご」
不意に男が声を出した。フランは布を外す。
「…あなたh「綺麗な羽ですね!」
…はぁ?何言ってるんだこいつ。
「綺麗です…本当に。うーん、どうやって作ったんですか?」
「作っ…アナタ本当に変な人。アナタは今から壊されるのよ?」
…呆れた。普通の人間なら怖がって泣くか、私に反抗するか。
なんだろうこの人間!不思議!わたしを怖がらないなんて!
ひとまずこいつ壊さないでやろう。
「○○っていうのね。」
「はい。」
「あぁもう、敬語なんて堅苦しいわ。私はフランドール。敬語使ったら、キュッとしてどかーんだから」
「あはは。分かったよ。」
彼に幻想郷、そして私の事について教えた。どうやら彼はよく状況を飲み込めてなかったらしい。
「あぁ、そうだフランドール。君は絵本は好きかい?」
「えぇ。良く
パチュリーが読んでくれるわ。」
すると○○は背負っていたリュックから絵本を何冊か取り出した。
「読んで。私はよく分からないから。」
「そう?いくよ。」
○○の読み方はとても丁寧だった。その場面が色鮮やかに頭の中に思い浮かぶのだ。
パチュリーはなんというか、淡々と読む。
○○と読む時間は楽しかった。
「ふああぁ…○○?」
隣で寝ている○○を呼びかける。
私はどうやら○○と出会った頃の夢をみていたらしい。
○○は面白い絵本を沢山読んでくれた。
もう絵本がない、ということで○○と私でお話を作ったこともあった。
○○がここにきて、一年が経とうとしていた。
そんな日々もいきなり終わりを告げた。
それはフランが○○に対する恋情を自覚したころだった。
「はぁい。此処に○○って子はいるかしら?」
にゅっと隙間が開き、八雲紫が現れた。フランは身構える。
「ゆ、紫さん!?」
○○は歓喜の声をあげる。
なぜ。どうして。○○は、私のおもちゃなのに。
そんな隙間妖怪を見てなぜ喜ぶの?
「教えてあげましょうか?悪魔の妹。」
紫は、ゆっくりと口を開いた。
○○は、あるときに子供への読み聞かせを行うため、学校に向かっていた。
しかし、紫が何気なく開き外に出ようとした際、そのユキマに一人の人間が吸い込まれていった。
一回隙間の中で喋って情報交換した途端、○○が消えた。
紫が大変だ、と思った時にはもう幻想郷の空に○○は見当たらなかった。
そう、レミリアたちに保護という名の監禁をされていたのだ。
それはフランのもとに来る一か月ほど前。
レミリアは○○に恋をし、自分のものにしようとしたがすんでのところで思いとどまり、フランの遊び相手にしたようだ。
「はぁ、本当に苦労したわ。本来ならこの人間は不要。なのにあの悪魔ときたら、すべての力を駆使して守りを固めていたの…。おかげで一年もかかったわ。」
「あ、○○…。行っちゃうの?」
フランは心底悲しそうな顔を○○に向けた。
○○はこくりと頷いた。○○は、なにも思ってないのだろうか。
「さぁ、貴方。戻るわよ。」
紫が隙間を展開する。それは大きく、フランドールと○○のこれからの距離の様。
「い、行かないでよ!う、あああああぅ…!」
フランは○○を壊そうとしたが…壊せない。
大切だから。
壊したくない。だってまだ未完成だから。ならば。
「これを、もらって」
最初に綺麗と言ってもらった羽をぐっと引っ張り、付け根の目を破壊する。
「う、ぁ!!!」
痛い。痛い痛い痛い。でも、これをもらってくれればずっと一緒だ。
「…フラン。ありがとう。」
そういって○○は隙間へと消えていった。
残されたのは、片羽の少女。
現世に戻った○○は、羽を眺めた。そして静かに泣き、そのあと行方不明だった○○との再会に家族が泣いた。
仕事に復帰し、そこそこの生活を送っていた。が、フランのことは忘れられなかった。
深夜。
○○は羽を枕元に置き、寝た。夢を見た。
それは、現世にきて三年後のことだった。
夢の中。
「あ!○○っ!会いたかった、会いたかったよぉ!」
フランが、抱き着いてくる。これは、夢?
そうだ夢だ。もう二度と会えることのない姫君。
ならば話を、聞いてもらおうか。
「なぁ。俺は、フランのこと、好きだったんだよ…。」
泣いた。だって夢だから。目の前の片羽の少女は驚いた顔をし、にこりと微笑んだ。
「本当!?ねぇねぇ、○○!羽が再生しないようにするの大変だったんだー。銀を流したんだよ」
よくわからない話を始める夢の中のフラン。
「今も、痛いけど。そっかぁ。○○私のこと好きだったんだね?」
うん、でももう、会えないよ。
「えー?なんで?ここは幻想郷。またあえてうれしいよ。」
くすくす笑うフランは、大人びて見えた。可愛い。…?今、なんて?
そのくすくす笑いはいつしか大きな叫び声とも似つかぬものになっていた。
「きゃはははっ!○○。もう、は な さ な い よ !」
フランは、右手を、開いて―…。
次の日。
布団の中、○○は遺体で発見された。急死だった。
その、色々な人が嘆き悲しむ中で、○○の遺体は幸せそうな顔だった。
その綺麗な、羽を握って。
最終更新:2012年07月23日 20:31