「うーん」
最近魔界が騒がしい。またどっかの輩が旅行ツアーでも組んだのだろうか。
私は少し出かけることにした。うん、運動運動。
「夢子ちゃん、少し出かけてくるねー」
いってらっしゃいませ!という声を背中に、私はうろうろした。
あー、
アリスちゃんは今いないのよねぇ。あの紅白やうふふとか悪霊とか…あれれ?
あと誰かしら?
あっちにふらふら、こっちにふらふら。
少しすると、こちらもまたうろうろしている男を見つけた。
何してるんだろ。
「そこのあなた。」
「!?!ろ???めねせてく!?」
何いってんだろ。…驚いてるのね。
「神に向かって驚くな!…と、何をしているの?」
「え…神様ですか?」
「えぇ。そう、だけd」
「お願いです!ここから出して下さい!」
うおお。ないとる!これは見もの…じゃなくて、
「迷い込んだの?」
「いいえ、少しあっちの世界でヘマして…博麗の巫女に飛ばされました。」
ふーん、お土産、かな。いいや、食べろってこと?
「そう。なら暫くうちで預かってあげる。」
「え!?」
「その巫女。かなりの力を持っているわね。そいつを怒らせたって、あなたなにをしたの?」
「うぅ…」
しょーん、と男はうつむいた。
ふむ、なかなか可愛い男。博麗の巫女からのお土産だし、気ままにいじるとしよう。
とりあえず使用人として家におくことにした。
しかしその男(○○といった)は美味しい料理が作れた。
私はその味が好きで、○○に一目置くようになった。
「○○?」
「あ、はい神綺さま」
あのときとは別人のように私に従順になった。
神の力の大きさを知ったからか。
○○は私に奉仕してくれる。
外の世界の玩具とか、
楽しい話とか、
…少し寂しくなった時に手を繋いで寝たり。
それは神としてはあるまじき行為。
カリスマ皆無。
でもいいと思った。
次第に○○がいないと不安になったり、心が苦しくなったり。
なぜか分からなくて、夢子ちゃんに聞くと、
「恋ですよ神綺さま!」
といわれた。
恋、ねぇ。
暫くすると自覚してきた。
そう、○○がいないと苦しいのだ。
○○は基本お屋敷にいるだけだし、夢子ちゃんくらいしかお話ししない。
…夢子ちゃんは私が創ったモノ。恋なんてしないとは思うけれど…それでも胸が苦しいのだ。
だから私は○○に…告白した。
○○…ずっと一緒にいて。好きで、大好きで、す。
顔が火照る。○○は、僕も大好きでした。出会った頃から。と。
魔界に幸せな夫婦が出来た。嫁さんは夫に依存していたが。
それを全て受け入れる夫は大変だったろう。
どれだけ愛せど、人に寿命はある。
○○は幸せそうに旅立った。神綺は聖母のように微笑み、静かに泣いた。
それから暫くし、神綺がおかしくなった。
○○、○○!といいながら○○そっくりの人間を創っているのだ。
○○はもういないのに。
「これも、違う!」
神綺は創った人間を壊していく。
壊す理由は様々。
曰く、料理の味が違う。
一挙一動が違う。性格が違う。
…神綺は愛に溺れた。それが、この末路へつながったのか?
「違っ、違うぅう!また違う!○○じゃない!何で!○○、帰って来てよぉ!寂しいよ、苦しいよぉ…」
いくら創れど、違う物は違う。
神綺は壊れていた。○○そっくりの屍に埋もれ、彼女は今日も泣く。
最終更新:2012年08月05日 15:13