「あらあら、それはどうも」
幻想郷の白玉楼。
俺はとある事情で、亡霊達の住むそこに生きていながら住んでいる。
そんな事はともかく今日は満月の出る秋の夜。
月見団子が食べたい、という幽々子の意見によって白玉楼で月見をすることになった。
団子や芋料理は妖夢が作り、酒は俺が倉に眠っていたものを出した。
夕食を早めにすませて9時ごろに3人で月見を始め、11時を過ぎたあたりで妖夢は部屋に帰り眠ってしまった。
もう12時を過ぎたしそろそろ寝ようか、と言ったら酔っているのか幽々子が膝枕をしてくれると言い出した。
そんなこんなで俺は幽々子に膝枕をしてもらっているわけだが…………酒が回ってきたな、そろそろ寝てしまうかも。
もう視界もぐちゃぐちゃだし、なんだかぼーっとしてしまう。
「ねえ○○」
「なんだ幽々子」
「○○は本当に紫が起きたら帰ってしまうのかしら?」
そのつもりだけど。
でもその事は2・3ヶ月は前から言ってることだし、今更なにかあるのか?
「仕方がないだろう。こっちに残りたいとも思うが、向こうには母さんと姉さんがいるんだ」
父さんが死んで家計が苦しくなったのに二人は俺を高校と大学に通わせる為にパートやバイトをしてくれたんだ。
だから就職して給料で姉さんに何かを買ってあげたいと、母さんには楽をさせてあげたいと思ってるんだ。
「それにたくさん一緒に馬鹿やってきた△△や□□達がいるしな。だから、帰らなきゃ」
「そう」
一言つぶやき、幽々子が無表情になる。
ほんと今日はどうしたんだ?
調子でも悪いのか?
「それより悪い、俺はもう寝ちまうぞ?」
「大丈夫よ、そうなったら亡霊達に運んでもらうから」
そうか。
なら寝ても大丈夫か。
そんな事を考えると俺はもう寝ていた。
春になり紫さんが起きたと聞いてさっそく外に帰してもらおうと思った俺は、紫さんから予想外の事を聞いた。
母さんと姉さん、それに友人達がみんな死んだらしい。
そんな馬鹿なと紫さんに詰め寄ったが、やはり聞いた内容は変わらなかった。
なんでも向こうで俺は行方不明扱いになったらしい。
その情報提供の為に俺の家に集まっていた所に、トラックがつっこんだらしい。
確かにでかい道路に面している家だったが、そんな事が起こるなんて。
ショックで崩れ落ちてしまった俺を幽々子が膝枕で頭をなでながら慰めてくれた。
精神的な衝撃の為か泣きつかれた為か俺はそのまま寝てしまった。
まるで宙に浮くような感覚の、妙に深い眠りに落ちるその直前、ふと幽々子の声を聞いた様な気がした。
「私達の生活を邪魔する人間は全員死に誘った。後は○○さえ…………」
以下、とある日の烏天狗の新聞より抜粋。
白玉楼在住の外来人○○氏が精神の衰弱によって急死している事があきらかになった
偶然その現場に居合わせた西行寺幽々子氏が八雲紫氏に協力を仰ぎ、八雲紫氏の力によって○○氏は亡霊化した模様
無理やりな蘇生であった為○○氏の霊体は強度が足りず、当分の間は白玉楼を出られない様だ
しかし無理やり亡霊化をさせるという事は輪廻の輪から外すという事であり、その事について閻魔の四季映姫・ヤマザナドゥ氏は「(中略)」とコメントしている
また精神の衰弱により死亡したのなら、亡霊として蘇生しても精神状態は回復しないのではないのかという疑問点も残っており、当新聞はこの事を次号で判明させる予定だ
最終更新:2010年08月27日 01:28