なんか前の方で人身売買ネタが出てたから書いてみた

神隠しの真実


神社の地下
天井から鎖と黒革の拘束具で一人の男が吊るされていた
男は人間ではなかった
いや元人間と言うべきであろう
男の背中には黒い烏の羽が生えていたのだ

「おかしいと思っていたんだ!外の世界で要らない存在だから幻想入りしたはずの俺達が、都合よく妖怪共に愛されるはずがないってことをな!!!」

男の叫びは目の前の女性に向けられる
神隠しの主犯こと 八雲紫へと

「私が用意した人生に満足すれば良かったものを・・・・」

彼女は何時もの笑みではなく、その顔は怒りに満ちていた


彼、射命丸○○は妻の射命丸文と交換日記から始まり、ゴールインし現在は木端天狗ではあるが天狗の一員として新聞発行に携わっている
文が新聞発行する傍ら、彼自身も外来人向けのフリーペーパーを発行している
その日、彼が人里での取材の合間を縫って茶屋で休憩していた

「よう!○○暇か?」
「□□か!どうだ細工師見習いの仕事は?」
「まぁ・・・ぼちぼちかな。それよりこれを見てくれよ!」

□□が手渡したのは見事な細工が施された煙管だった

「前見た時よりも腕が上がっているな!!!どうだい俺のフリーペーパーに広告でも・・・」
「いいよ。それよりも見てくれよ!この煙管は吸い口がはずれるようになっていて・・・」
「あら?□□じゃないか!相変わらず腕が良いね!!」

振り向くと、水色の髪をしたエンジニアの河童 河城にとりが立っていた
その姿を見た□□は俺に煙管を渡した

「とりあえず使ってみて感想を話してくれよ!な!」

それだけいうと□□は茶屋から逃げるように出て行った
その後、□□の姿を見たものはいない


失踪した□□から託された煙管 
中からは数字とマス目の書かれた紙が入っていた 
そのマス目には数字と人物の名前
数字は金額を表しているようだ
そして人物名は幻想郷の有力な人妖達の名前が刻まれている
あまりにも情報が少なかった

「○○いますか?」

妻の文の声が近づいてくる
書き付けを隠し、妻をむかい入れる

「星熊様の結婚式の広告について相談したんですが」
「ああ、もうそんな時・・・・!」

パズルのピースが嵌った


妻が寝静まった夜
あの紙を取り出し、過去半年の結婚記事とを比べる
名前が書かれていた人妖は皆、外来人の伴侶を得ている
そして、マス目を外来人長屋の部屋割に重ねると・・・

「そんな・・・!」

元外来人達の部屋と、その伴侶達の名前と金額が書かれたマスが一致していた

人身売買

あり得ない話ではない。
事実、女妖がそのありあまり劣情をどうやって発散しているかはいろいろと黒い噂がある
もしもだが、自分達の好みの男性を「わざと」幻想入りさせているとしたら?
これは「幻想の存在だから」、「不幸な事故」といった今までの常識が嘘であるということになる
金銭の受け渡しは何処で?
人里でも妖怪の山でも他勢力の人間が集まることは少ない

「博霊神社か!」

なるほど、妖怪神社と名高いアソコなら人間はまず近寄らない
オマケに大勢妖怪が集まっていても傍目からは宴会としか思われない
ちょうど今週末には大きな宴会が開かれる予定だ
オークションの会場としては申し分ない
俺は妻の「天狗の隠れ蓑」を着て会場に潜入した

神社の本堂
そこは異様な熱気に包まれていた
見慣れた九尾の狐が声を張り上げる

「名前は××。親のネグレクトにより幻想入り予定。14歳で顔立ちはいいが性格が悪い。童貞なのでスタートは金五両から!」

すぐさま金髪と紫のグラデをした生臭坊主が声をあげる

「金5両!」

その声を聞き、ピンク色の髪をした仙人が札をあげる

「金6両!ショタとあってはこれくらいの価値はあるわ」
「金7両!」
「金8両!龍の子供も付ける!」

「他ないか!では・・・・」

「金9両!部下による八雲家への恒久的な協力を約束するわ」
「降りるわ・・・・」

俺は吐き気を覚えた
アイツらは俺達を金で買っておきながら、「幻想入りした哀れな被害者」に親切面ですり寄ってくる
そして身も心も自分のモノにするのだ
あの烏もきっと・・・・
俺がその場を後にしようとした
だが

「何処に行くの?」

紅白の処刑人が俺の手を掴んでいた
俺は忘れていた
此処が幻想郷の処刑人 博霊麗夢の根城だということを
奴の勘を甘く見ていた

「さて・・・どうしようかしら?」

闇のオークショナー 八雲紫は獲物を甚振る様に俺を見下ろす

「俺を消すつもりか!!!」
「あなたの記憶をね。お友達の□□は河童に組みかえられた身体から、自分を生粋の河童と信じて青河童とよろしくやっているわ。」
「畜生が!!!」
「痛くはないわよ。さあ覚悟はいい?」

紫が近づく

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


「おーい文、校正を頼めないかな?」
「あ・な・た、此処では編集長よ。まったく手のかかる記者だこと」
「ごめんよ。木端天狗に生まれてから今まで新聞なんて作ったことがなくて・・・」
「私が教えてあげますよ。手とり足とりね」
「ありがとう!やっぱり文は頼りになるな」
「その代わり今夜は寝かさないわよ?」

「生まれ変わった」夫の○○を見つめる文は満足気に微笑んだ

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最終更新:2012年08月05日 16:42