幻想郷に迷い込んで来た、外来人の〇〇は、ある晴れた五月五日の昼下がりに自宅を掃除している最中、柱にある不可解な創を発見した。
創はある程度、離れて横一線で三本ほど刻まれていた。
高さ的には〇〇が座った目線くらいで家具で擦った記憶も無いし、犬や猫が入って来た記憶も無いし色々と不自然だ。
謎が深まるばかりで、心当たりが無いかと思い聞いてみた。
「なぁ…慧音、この柱の創…。」
…アレ?独り身なのに何故、慧音さんが出てきて、然も当然に聞いているんだ?
「どうしたのだ〇〇?…あぁそれ。さぁ今年もお父さんにどれだけ大きくなったか計ってもらいなさい。」
「はぁーい。」
〇〇が疑問に思っていると、ひょっこりと慧音が現れたと思ったら今度は自分と慧音を足して二で割った男の子が現れた。
「???」
「はい、しっかりと刻んで檀那様。私達の結晶の成長と言う歴史を。」
状況を理解出来ない〇〇に慧音が彫刻刀を笑顔で渡す。
「あ…?あぁ、そうだったな。よーし、計るか。」
「ボク、早く大きくなりたいなぁ。」
「どれどれ…お!今年もずいぶん大きくなったぞ?」
「ホントに?やったぁーー!!」
「さぁ二人とも、美味しい柏餅を買ってあるから食べようか?」
柱にしっかりと息子の成長を刻み成長を喜び、一家団欒する。何ら変わらない幻想郷の五月五日だった。
慧音、愛しているよ。
最終更新:2012年08月05日 20:19