たまにはしっとりとした作品でも書きたくなったので投下
13階段
一歩ずつ、階段を上がる
階段を上るにつれこれまでの事が脳裏を過る
山で遭難して幻想入りしたこと
人里で機械工として働いたこと
そして・・・・
俺は外界へ帰るんだ!忘れろ!忘れちまえ!
いくら思い出を抑えつけようとしても、彼女のことを思い出す
「よう御同輩」
見上げると、そこには禰宜の格好をした男が階段に腰掛けていた
「お前さん今更になって帰りたくなくなったんだろ?」
俺は答えない
「そう睨むな。俺は君にあるものを渡すために待っていたんだ」
男から渡された粗末な袋には紅い丸薬と青い丸薬が入っていた
「紅い丸薬を飲めば幻想郷にいたことを全て忘れる。さらに青い丸薬を飲めば・・・全てを忘れる。忘れて幻想郷の一員になる・・・」
男と別れ、階段を再び上りはじめた
徐々に博霊神社が見え始めた
そこに忘れがたい、一人の少女が俺を待っていた
「・・・・にとり」
俺は目の前の少女、にとりを抱いた
にとりは俺の雇い主だった河童の少女だ
外界への帰還が決まった夜、彼女は俺を求めた
一夜だけの関係のハズだった
そう一夜だけの・・・・だが・・・・この溢れる想いは・・・・・止められない!
階段に腰掛けた男が博霊神社にやってくると、彼の姿はなく中身の無くなった袋が転がっていた
「アイツもか・・・・」
「○○!誰も来ないから今日は店じまいにしてもいい?」
「ああ。手伝うよ霊夢」
妻の元へゆっくりと歩いていく
外界へ戻ることを拒否した元外来人である博霊○○は妻である博霊霊夢にそう答えると、空になった薬袋を持ってともに初夏の風の中、神社の奥へ消えていった
最終更新:2012年08月05日 20:25