知っているかい?もともとタロットカードは占い専用ではなく、賭け事専門のトランプだったということを。
なんでも、それを使ってジョーカー(大アルカナカードが相当)ありの大貧民みたいなゲームをしていたらしい。
女帝の微笑
朝起き、勤務地のヴワル魔法大図書館に行く。
外来人長屋を出て半年、悪魔の館と言われても意外と住み心地はいい。
身支度を整える、宛がわれた部屋を出る。
図書館では館長の
パチュリーさんが何やらカード状のものを広げていた。
様々な意匠と金押しの豪華なそれはタロットカードだった。
「館長、それってタロットカードですよね?何か占っているんですか?」
「タロットカードを占いの道具にしたのは19世紀のゴールデンドーン派・ウェイト版からよ。だから、これ自身には何の加護も霊力もないただの遊び用よ」
「遊び用?大貧民みたいなものですか?」
「よく知っているわね。今日は本の搬入もないし遊んでみない?」
「じゃあ、メンツを集め・・・・」
じっとりと濁った瞳でパチュリーは○○を見つめた。
「
小悪魔は駄目よ?悪魔に首を賭けるなってね。それにこのゲームは二人でもできるわ」
「二人で大貧民?なんか直ぐに終わりそうな・・・」
「大丈夫。退屈なんてさせないわ」
館長の言葉に嘘はなかった。
バロネスという、このイタリアの古いタロットゲームは大貧民とよく似ていたがそれよりもカードが多く展開は飽きなかった。
「ねぇ○○?トランプ占いはトランプの一人遊びから発生したって知っているかしら?」
「?」
急に空気が冷えたように感じた
「ゲームはあくまでカードを選別する手段でしかない。残ったカードの意味を読み取ることが肝要・・・」
「私の残りはこれだけ・・・」
広げられた手の中には「恋人」「吊られた男」「死神」
「恋人」・・・迷うことなく、気持ちを信じて
「吊られた男」・・・相手に尽くすこと
「死神」・・・全てを捨てなさい
僕の手元に残った札は「愚者」。
意味は・・・
目の前には一糸まとわぬ姿の館長が立っていた。
手を触れてはいけない。
だが、僕の腕はひとりでに彼女の柔肌を堪能していた。
「心のままにふるまいなさい・・・・全てを捨てた愚者のように」
彼女は包み込むような微笑を浮かべながら彼を迎え入れた。
小悪魔のいない図書館に嬌声が響いていた。
最終更新:2012年08月05日 21:53