最近とある都市伝説を聞いた

まず、日記帳とかノートか何かを用意する
そしてそのノートに自分の自己紹介みたいのを誰かに話すように書く

んで、ノートを夜中に襖、ドア、窓とかでもいいので隙間をつくって、その間にノートを入れる

そして朝起きると、ノートに誰か分からないが返事が書かれているらしい

ずいぶんと作り話っぽい都市伝説だが結構成功者は多いらしい
といってもほとんどの場合長くても一週間ぐらいで返事が来なくなるらしいが

余りにも退屈だった自分はこれを実践してみた


朝起きてノートを見てみると自分の滅茶苦茶な自己紹介の文のすぐ隣にとても達筆で書かれた返事があった

"とても面白い自己紹介でした。"
"良ければしばらく何か書いてはくださいませんか。"


…驚くべきことに成功だったみたいだ

こうしてよく分からない人物?との交換日記??が始まった


そんな感じでよく分からない奴との交換日記のようなものが結構タラタラと続いた

と言ってもノートには自分の日常の事や思いついた事を書くぐらいで相手についてはあまり深く追求しなかった

それでも相手からの返事だけは長くなるばかりで自分が2行ぐらいしか書いてなくても返事は50行ぐらい書かれている
返事を書かなかった日なんて次の日には文が2倍以上になっている

それでも相手の文の内容はとても立派で100行ほどの分にたった2行の返事しか書かなかった時は流石に申し訳ない気持ちになったりもした
そんな相手の文は少々古臭い感じがありしっかりした達筆の字がさらに古臭さを増していた

長く交換を続けてると相手の性格なども分かってきた
まず文体などから女性という事は分かった
文の構成はまるで明治時代の文豪の小説のようで読むたびに知的な初老の女性姿を想像していた


そんな感じで書き続けていたものの最近は飽きが来て放ったらかしにすることも多くなってきた
今日ももうすぐ夜がやってくる もうネタも無くなってきた

今日はなんて書こうか…

(そろそろ交換日記をやめる)
(相手についてさらに追求する)
(放ったらかしにする)

どうしよう?



……交換日記をやめたり放ったらかしにするのは都市伝説じゃ最悪のパターンになる気がする

ここは一度相手について深く追求するべきだろう


"あなたは何処に住んでいるのですか"
"何故この日記を始めようと思ったのですか"
"あなたは何者なんですか"
"自分がこの日記をやめたりしたらどうしますか"


思いついた事を書けるだけ書いた 後は返事を待つだけだ



朝、いつも通りノートを見てみる

ノートの中の文はいつも以上に多く、ひと通り見るにこの大学ノートに30ページは書いてあった

まず、"何処に住んでいるのか"
幻想郷、とても綺麗な場所らしい 聞いたこともない地名だが日本に存在するのだろうか
よく読むとそこら辺についても10ページほど詳しく書いてあった
博麗大結界…?振り仮名までついて読み易く書かれていたが殆どの単語の意味がさっぱり分からない
とりあえず日本には存在しているらしい


"何故日記を始めたのか"
始めた理由は…寂しく退屈だったらしい

”何千年も誰とも結ばれず、友好的になれず、たった一人 流石に妖怪の私でも寂しくなったのですわ”

だそうだ 妖怪?


"何者か"
それについても20ページは書かれていた

名は 八雲紫 どうやら…妖怪らしい 想像はついていたがまさか妖怪と交換日記を続けていたとは
さらに生い立ちについても異常なまでに詳しく書かれていた

誕生は…紀元前…!?   初老の女性って次元ではなかった
趣味などについても書かれていた気がするが面倒なので目を通さなかった


最後に、"自分がこの日記をやめたら"
それについてはとても簡潔に書かれていた


”この交換日記は私が生きていた数千年の中で一番楽しい出来事でした”
”この日記をお辞めになるというのなら とても、悲しく、寂しいですわ”


…と書かれていた




もうここら辺で区切りを付けるべきじゃないだろうか

俺は返事を…返事を……

(この日記をやめる)
(直接会う)


どうすりゃいい…?


返事は…別に一つに絞る必要は無いはずだ
この日記をやめて直接会うってことも出来る

そう決めるとすぐさま返事を書いた


”俺はもうこの日記をやめようと思います”
”でも、このまま日記をやめてしまうのはとても無礼な事だと思うのです”
”ですので、一度お会いできないでしょうか?”


そしてそのまま夜中になるのを待った



夜中、
部屋の空気が急に変わった

襖の隙間をみると白い手が伸びていて、その手がノートを取った

しばらくすると隙間から女性の啜り泣くような声が聞こえる

中を覗くとそこは隣の部屋ではない全く別の部屋だった
そこにとても美しい金髪の女性が一人おり、自分のノートを見て泣いている

ふと女性…多分八雲紫だろうか 彼女が襖を覗いている自分に気づいた

するといきなり、物理法則を無視した感じで隙間から彼女が飛び出してきた

何か言っているが言葉になっておらず、まるで赤子の様に自分の胸の中で泣き続けている


『もう絶対離しませんわ』


言葉になっていない筈の声の中にはっきりとそう聞こえた


『もう独りなんて嫌ですもの』


いつの間にか彼女は泣き止んでいた




「もうずーっとお話していましょう? 文字だけなんてつまらないですわ」
「もう ずーーっと見つめ合っていましょう? 声なんて必要ないですわ」
「ずーーーっと抱きしめあっていましょう 心が通じ合っていればもうなーんにも要りませんわ」




妖艶で、子供の様で、魔女の、悪魔の様で、天使の様な、そんな笑みを浮かべて 自分を隙間の中に引きずりこんだ

そして残ったのは、もう誰も使うことのない一冊のノートだけだった











まず、日記帳とかノートか何かを用意する
そしてそのノートに自分の自己紹介みたいのを誰かに話すように書く

んで、ノートを夜中に襖、ドア、窓とかでもいいので隙間をつくって、その間にノートを入れる

そして朝起きると、ノートには一人ぼっちで寂しい妖怪からの返事が書かれているらしい

まあ、今は寂しくないだろうから返事はもう来ないけれど。

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最終更新:2012年08月17日 00:05