予想以上に長文になってしまったすまん
病んだ親子愛を目指してみた


獅子は我が子を千尋の谷に突き落とす。ならば妖怪は・・・・ 


僕が意識を取り戻すとそこに理想郷はなかった
僕が考え出した物理障壁は破壊され
僕が自らの血を憑代に書いた呪符は燃え上がり
皆で建てた家々は破壊され、その暗がりでは皆が・・・・悦びの声を上げていた

少し女っぽい所のあった●●

頭は弱かったが弓矢でクマを倒せるほどの腕前だった××

筋骨隆々の偉丈夫だったけど甘いものが好きだった□□

皆アイツらの腕の中で快楽を貪っている
僕の父親のように・・・・


僕が生まれたとき、父親はいなかった
居たのは金髪の「あの女」
僕はただ漠然とアイツを母親と思っていた
でもアイツにとってはどうでもよかった
所詮、僕はアイツの「結婚生活」についてきたおまけだったのだから

邸の地下
そこには昔から複雑な呪法が書かれた一室がある
僕がソコへ行ったのは子供っぽい反抗心からだ
僕がその部屋に入ったら石のようなあの女が激昂するだろう
幼い僕はただそれだけしか考えていなかった
古文書で知った解呪法と結界解除法を使って呪法を引きはがす
無論、引きはがした呪法を別の部屋に張り付けて警報を止める

「何だよ・・・・これ・・・・」

目に入ったのは僕とあまり変わらない年恰好の少年
そのスレンダーな肢体は様々な装飾品に彩られていた
まるで王子様のようだったが、首や四肢に拘束具がつけられていた
異常なのはそれだけではない
その少年の髪の色と瞳の色以外は僕とほとんど「同じ」だった
僕が生まれて以来、アイツは父親の話をするのを許さなかった

目の前の「彼」は・・・・僕の「父親」だった

恐怖に慄いた僕は家を飛び出した

夜の帳が下りて、森が闇に包まれる
怖気を感じるような妖力を感じる
その瞬間、足元の地面が消失した
あの女の能力だ

「スキマ」の中にあの女がいた

「とうとうラインを超えたわね・・・・」

相変わらず石のような表情を崩さない

「アイツ・・・地下のアイツは僕の父親なのか?」
「ええ」
「なぜ教えなかった?」
「親が子に全てを与えるとでも?」
「あなたはいつもそうだ!僕は何者なんだ!」
「ありていに言えば私の息子。そして・・・・卑しき半妖」
「畜生・・・・・」
「もうあなたの居場所はない。どこぞへと去りなさい」
「帰りませんよ!あなたのような悲しい親の元になんて!」
「好きにしなさい」

目の前には闇
いくつもの獣の声が響いていた

半妖であるとはいえ、僕は人里で生活することはできない
人里の守護者こと、上白沢慧音さんは便宜を図ってくれようとした
だが、半妖が人里に馴染むのは難しい
僕は慧音さんに礼を言い、妖怪の山の裾野に居を構えた
数年が経った
近くに住む豊穣の神姉妹と知り合い、どうにか一人暮らしができるようになったとき、予期せぬ訪問者が訪れた

「助けてくれ!!!」

彼は人里の外来人で名前を●●といった
彼は外界への帰還を行うために日々新聞の配達をしながら外来人長屋で生活していた
そんな彼を天狗が見初めた
彼は外界への慕情深く、彼女の求愛を断った
結果、仕事を失い、天狗は人里の長老に竜巻を起こすと脅して●●を供物とするよう圧力をかけてきた
運良く、慧音さんが彼の歴史を一時的に食べ逃がした
裾野に住む隠者に助けを求めるように、と

「●●さ~んでてきてくださいよ。あんなによくしてあげたじゃないですか」

口調は柔らかいがその裏には凶暴さが滲みだしている
僕は憎い「アノ女」から受け継いだ能力を使った

空中を目玉飛び交い、辺りの空気が変わる

「これで大丈夫だ。アイツらは此処を知ることができない。領域を弄ったから」

「領域」を操る程度の能力

忌々しいが、この能力があるおかげで一人で生き延びてこれたといえる
今、ここ全体があの「化け物」の理解できる領域外にある
三次元と四次元の関係と同じで、こちらは相手を見ることができるが相手はこちらを見ることすらできず、干渉することもできない

「君はこれからどうしたい?」
「人里には戻れないからな・・・・・正直」
「ならここに住めばいいさ。多少、手伝いをしてもらわなければいけないけど・・・」
「よろしくお願いします!えっと・・・」
「僕は○○。苗字は・・・・ない」

この庄に最初の住人がやってきて、もう三年
様々な人間が訪れた
竹林の診療所で下男として雇われていた××
ついうっかり花札で鬼の女を負かしてしまったお蔭で強制婿入りの危機に陥った□□

皆、止むに止まれぬ事情をもって此処にやってくる
僕は皆を守るために様々な仕掛けを準備した
僕がずらした領域を並みの妖怪が感知できるとは思わないが、最低限の備えは必要だ
何よりも皆、「家族」を守りたかった
それだけだった

ユートピアの日々はある日突然終わりを告げた
綻びはささやかなところから始まった

「蟲の数が多い?」

ここ幻想郷では毒のある蟲も多く生息している
そのため、領域ではじかれるようにしている
思えばこの時に場所を移すなどすればよかった
そうすればこんなことにはならなかった
赤い満月が見下ろす夜だった
村を極彩色の弾幕が襲った
皆は飛び起きてきた

そして彼らの目の前には

「ウソだろ・・・・・・・?」

あの化け物達が群れをなして襲ってきた
僕はあらん限りの妖力を使い、反撃する
だが多勢に無勢だった
なぜか「領域」は無効化されてしまっていた
皆は手に鉈や弓、先込め式のライフルを持ち反撃するが、一人一人と連れて行かれる
中には暗がりに連れ込み、彼らを凌辱しはじめる奴もいた

衣服を引き裂く音が響き

すすり泣く男たちの声が途切れることはなかった

そして興奮した「化け物」の笑声が木霊する

「やめろ・・・・・!やめてくれぇぇぇぇぇぇ!」

妖力を振り絞って見込みのない反撃をしようとした時だ
背後からの衝撃が僕の意識を刈り取った
消え去る意識の中、背後に「あの女」が立っていた

「血は争えないわね。ここに理想郷を作ろうなんて・・・・・」

○○の母親 八雲紫は幾分か成長した我が子を抱きしめた
何度こうしたかったか
だが、幻想郷の管理者としてそれはできなかった
彼女は○○をあえて冷たく扱った
それは、彼を新たな「管理者」として教育するためだった

「力なき理想は脆い。これでわかったでしょう?」

○○は答えない

「貴方は幻想郷の申し子。母親を娶ったオイディプス王のように全てを破壊し幻想郷を我がものにしなさい。そのための試練は私が用意してあげるわ・・・」

狂った饗宴に終わりは見えなかった
いつのまにか男達は悲鳴の代わりに、快楽を貪る嬌声を奏でていた

「・・・・あなたの力になる半妖はいくらでも用意してあげるから」

紫が○○の頬をなで、そして笑みを浮かべた

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最終更新:2012年11月11日 12:33