「ヤンデレこわい」

ある日の幻想郷の人里にある集会場。
その日、集会場はいつにまして里の人間が割と居た。

「へへ…ここいらでよ、濃いめのお茶が一番怖いや。お後がよろしいようで。」
大いに笑う里人達が見つめる先には高座で落語をしている青年だった。


青年は〇〇と言う名前の外来人で少し前に迷い込み、人里で保護され帰還資金を貯めるため仕事していた時の休憩中に趣味で好きな落語を披露したら、 これがウケて週に数回程、集会場で講演するのが日常になりつつあった。

幸い落語は多数覚えておりネタに尽きることは無く、少しながらの金額や食料のお捻りが有り〇〇も満足していた。
本日の演目は「まんじゅうこわい」を披露し、いつも通り盛況で終えて解散となったが、とある里人が〇〇に聞いた。

「それで、〇〇。お前さんが怖いものは一体何だ?」

そう聞くと他の里人も興味を持ち〇〇の方を見た。
すると、〇〇は困った顔した。

「怖いものですか?う~ん…幻想郷って神様や妖怪、妖精、幽霊、宇宙人、吸血鬼等々が当たり前に居て恐ろしかったですけど、皆さんいい方達でしたし…う~ん…。」
そう少し悩んでいると、直ぐに何かを思い出した。

「あ、有りました。『母親』ですね。親父も怖いですけど、母親がもっとおっかないですよ。」

すると里人からは「そりゃあ、そうだな。」や「違いねぇや。」や「母親ってのは、それだけ強いんだよ〇〇」と返って来て笑い声が木霊した。


その日の夜半ー、
〇〇は自分に割り当てられた小屋で寝ていると、枕元に何かの気配が複数あるのを感じた。
余りの恐ろしさに目を開けずにいたが、意を決して開けると雨戸から洩れる月光で侵入者が確認出来た。

「あの…藍さんに慧音さんに白蓮さんに永琳さんに咲夜さん…。何故ここに…?いつから、居ました?」

そこに居たのは幻想郷で知り合った重鎮の女性達だった。

しかし、どうも雰囲気が何かおかしい。
まるで獲物を狙う肉食動物みたいが互いに牽制する気配がしていたが全員が異口同音で〇〇に向かって言った。

「「「「「〇〇が寝静まってから【です】。『何故?』って、〇〇が昼間言っていたじゃないか【ですか】」」」」」

「…え?…えっと?」


「「「「「『母親が怖い』って。つまりそれは、今日の落語みたいに本当は『好き』なものよね?」」」」」

「い…いや…え?…え?」
「「「「「そうだよな。【ですね。】殿方は母親みたいな女性を選ぶから。大丈夫。母性には自信がある【ありますから】。」」」」」


「いや…違…」


「「「「「無理しないでいい【です】。私がずっっっと側に居るから。でも…先に勘違いした牝猫を片付けるから待っていてくれ【下さい。】」」」」」


そう言うと全員、力を解放して壮絶な弾幕勝負を始めた。
その光景を見て〇〇は思った。

(今…濃い目のお茶を飲んでも落ち着かねぇ…。)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年11月12日 11:21