七夕が過ぎてもうたが、七夕SSを投下
「織姫と彦星を引き離した天帝は織姫に横恋慕してその隙に手籠めにする予定だったが、天界に話が広まり以来何もできず生殺し状態」という話を聞いて書いてみた
幸福な終末
この小さな背中を少し押してやればいい
そうすればそのまま参道を転げ落ちて死ぬ
そしたら魂が戻ってくるんだ・・・
私は意を決して●●の背中に手をかけて・・・
「
諏訪子!映姫から手紙が届いたよ」
「・・・ああ行くよ」
後には無邪気に遊ぶ●●だけが残されていた
「どうして罰があたえられないんだい!アイツは私達から早苗を奪い取ったんだよ!○○の魂を分離させて仕置きするのは当然じゃないか!」
「確かにそうだ。早苗は下賤な外来人の○○に入れあげた挙句、妖怪に殺された○○を助けるために奇跡を使って・・・・」
「なら!」
「早苗は○○の魂と自分の魂を掛け合わせ血肉を与え錬成させた。映姫の見解では●●は○○とも早苗とも違う存在であり、その罪を問うのは無理だということだ」
「そんな・・・納得いかない!いくわけがない」
神奈子の瞳が諏訪子を強く見据えた
「なあ諏訪子・・・・本当にそれは早苗のためなのか?」
「ああ当然さ!誰が下賤の民なんかに!」
「早苗と○○が会えないように参道と境内に結界をかけたのは諏訪子・・・・あんただったよね?」
「そうさ!」
「私は今が二人にとって幸福だと思う。神と人、肉体がある限り二人は永遠に一つになることなんてできない」
「うるさい!」
「諏訪子!」
わかっている
全ては私が原因だ
早苗が連れてきた外来人の青年
神としての敬意と、私たちと身近な隣人として触れ合う○○の姿に、私は遥か昔に死に別れた旦那の面影を見ていた
その時から早苗が気になり始めた
早苗が○○の話をするたびに胸の中を抉られるような痛みが走る
早苗と○○が一緒にいると、体の奥底の「女」の部分が疼く
だから私は結界を張って○○と早苗を引き離した
早苗には神と人の在り方について説教を垂れながら・・・・
そのことが私から大切な二つのモノを奪い取った
あの日・・・・
早苗は冷たい雨に打たれながら、○○の骸を抱きしめていた
○○は早苗に会うために結界の張られた参道を迂回し、早苗と何度も逢引していた
この日も逢引をしようとして、つけてきた野良妖怪に喰われたのだろう
私が妖怪をどう滅するか考えていたときだ
「諏訪子様、神奈子様。早苗は幸せでございました・・・・・」
「早苗・・・・?何を言っているんだい」
「お願いします・・・残された子も幸せにしてあげてください」
「やめなさい早苗!因果を否定したら早苗もただでは済まないよ!」
私と神奈子が止めようとするが遅かった
辺りが金色の光に包まれ、そこに二人の姿はなく早苗の翡翠色の髪と○○の黒い瞳を持った少年 ●●がいた
守屋神社を飛び出し、当てもなく彷徨い戻ってきた時は既に深夜になっていた
灯りの落ちた●●の部屋の戸をそっと開き、中に入る
青く輝く月が●●の白い肌を照らし出ていた
「早苗聞いてる?あなたは○○の身も心も手に入れた・・・・・」
諏訪子がどろりとした沼のような瞳で●●に近づく
「なら・・・・この子を好きに穢し尽くしてもいいわよね?」
そうつぶやくと、諏訪子は憎くてたまらない女と愛しくてたまらない男の面影を持つ●●の唇にくちづけをした
最終更新:2012年11月12日 11:52