先ず今作は試験的に固有名詞を使っている為ご了承を……


リレントレスポリス

石壁で囲まれた暗闇が支配する地下室。
鎖で繋がれた男が壁を背にうなだれていた。
ギィィと重い音と共に唯一の扉が開き、小柄だが貴族としての風格を備える少女が入って来た。
「考え直したかしら?私と一緒に運命を歩む事を……」
「誰が貴様の眷属になるか!」
少女は呆れたように息を吐き、言葉を続けた。
「いい?これは決定事項なの、逃れることの出来ない運命なのよ?」
「人の意思の尊重も出来ないヤツの言いなりになってたまるか。大体、俺には家族g」
「そんなことは訊いてないの。早く誓いなさい、レミリア・スカーレットの眷属になると……」
レミリアが胸倉を掴み、詰め寄ったその時、扉がドガンと勢いよく開き、一人の男がづかづかと入り込んだ。
その男は□□を見つけるとこう言った。
「お前が□□か?妖力による肉体汚染は無さそうだな。喜べ、外の世界に帰れるぞ。」
「誰だ貴様は!大体どこの分際で勝手n、カハァッ」
男は彼女が言い終わる前に鳩尾に拳を叩き込んだ。
拳は深くめり込み、レミリアは地に伏せ、うずくまる。
「人里で拉致、脅迫、その後10年間の監禁、強姦と無断で眷属化の未遂、この分だと名誉毀損も含まれるな。」
今の状況に置いてきぼりにされている□□が我に返ったようにその男に問いかけた。
「な、なぁ、あんたは何者なんだ?」
「俺か?俺はジョン・ドゥ、名無しの権兵衛だ。」

「…それで、裁定はどうなったんだ小野塚?」
「能力と人権の剥奪を一世紀さね。」
「随分と軽いものだな、もっと重くしても良いだろ。」
「人間に換算すれば懲役10年って所かねぇ~。そんなにカッカしなくても良いだろうに?」
今回の案件の報告書を届ける為に映姫の事務室まで向かう途中、彼は小町と話していた。
小町は皮肉を含んだニヤニヤ笑いで話していた。
「ふん、俺の部下を外の世界に戻してやるまでは徹底的に断罪してやる。」
「ほう、たしかお前さんとその部下は「遊郭」って所で捕らえられて、お前さんだけ四季様に身請けされたんだっけか?」
「刑事でなくとも考えりゃ彼処が風俗じゃなくて人身売買の取引場所であることは明白だ。
今回の案件はその組織に繋がらなかったがな。」
「しかし分からんもんだねぇ、なんで只の男一人に固執するんだか。」
「さあな。小野塚、お前だって何時かは起こり得る話だ。」

「残念、これでもアタイは酸いも甘いも苦いも辛いも経験したんだ、安っぽい惚れ方する程阿呆では無いさね。
っと、じゃあアタイは仕事に戻るとするよ、ごゆっくり。」
手をひらひら振りながら小町は去っていった。
「サボりの間違いだろうが……」
悪態をついた後事務室のをノックし、
「入れ。」
と返事が聞こえたのを確認し中に入る。
映姫は事務机で書類に目を通し、サインや判子を押している。皆がよく知る厳格な表情をしていた。
「ああ、ジョンですか。」
入って来たのが彼と分かると厳格な表情を解く。喜色を称えた表情にも見える。
「レミリアの件の報告書だ、次のターゲットと、組織の情報は掴んだのか?」
「いえ、組織は定期的に場所を変えている所までは分かっているのですが……、それより……」
そう言うなり映姫は彼に擦り寄った。腹部に埋めた顔からねっとりと熱い吐息がかかる。
「これで20人分の情報を教えました、10人毎の約束です。私を…、抱いて下さい……」
「情報を直ぐに渡して帰宅してからな。」
何も聞かなかったかのように彼は素っ気なく返事をする。
「そう言って一週間帰って来なかった時があったでしょう?お願い、もう我慢出来ないのです。ねぇ、良いでしょう、○○?」
その時、突然彼は彼女の胸倉を掴み、ドンと壁に押し付けた。
目線を合わせる為に彼女の体は宙に浮いていた。
「いいか、その売女みたいなツラで気安くその名前を呼ぶな!ここに居る間はずっとジョン・ドゥだ。
貴様が俺の事をどう思っているかは知らんが俺は貴様が大嫌いだ。
その貧相な体に、髪も、声も、顔も、見るだけで虫唾が走る!
俺の部下を救う為、外の世界に帰る為に仕方無く契ってやった事を忘れるな!……」
普通こういう風に凄まれれば身が竦むものだが、映姫は目を潤ませるだけだった。
お互いの顔が近い所為か寧ろ吐息が更に熱く、荒くなっていた。
「クソッ……」
彼女が頑固者である事を思い出し、近くにあったソファに押し倒し、乱暴に映姫の服を剥く。
映姫は若干の怯えと期待混じりの女の表情で彼に抱き付く。
彼は手っ取り早く情報を得る為に彼女を満足させる事に専念した。
クソが…、メンヘラだらけか此処は……

◆幻想郷縁起妖怪録
名無しの権兵衛
ジョン・ドゥ
:能力
 妨害を受け付けない程度の能力
:種族
 閻魔補佐
:危険度
 高
:人間友好度
 低
:主な活動場所
 是非曲直庁

四季映姫・ヤマザナドゥの元に一人の部下が配属された。
是非曲直庁の制服にくたびれたトレンチコートと呼ばれる上着を羽織り、
不機嫌な表情と三白眼が特徴的である。
配属される前によく似た外来人の目撃情報がある為、元外来人ではないかと推察される。
また彼の名前である「ジョン・ドゥ」は名無しの権兵衛と同じ意味を持つ事から本名は別にあると思われる。
彼はある外来人を捜しているらしいが、それが彼との関連性に関しては不明。

◆能力
簡単に言えば罠は不発に終わる、鍵は壊して開けるといった彼に向けられる妨害要素を全て無効化する能力である。
殆どの場合、この能力でお陰で事情聴取の際は必ず聞き出している。

◆目撃報告例
居酒屋で容赦なく相手の指をへし折っていたよ、恐いねぇ……。
(匿名希望)
事情聴取という名の手荒い尋問である。

館を襲撃され、メイド長はおろか主まで殴り倒されました。
(門番)
最近どこかで家宅捜索が行われたようである。

私の××を返して!!!!!!
(匿名希望)
彼が絡む案件は必ず全て外来人を外の世界に送還しているという共通点がある。

◆対策
捜査以外で接触することは無いといって差し支えない。
前述の通り、彼にはいかなる妨害工作や嘘が通用しない為、尋問の対象にされたなら抵抗は一切してはならない。
逆らえば逆らう程痛い目を見る。

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最終更新:2020年09月15日 19:37