ダブルバインド
「よう大将!客入りはどうじゃ?」
「様なんてむず痒い言い方をするでない。わしはただの金貸しじゃよ」
「いえいえ!担保無しであれだけの大金を貸し付けてくださった恩は忘れませんよ!」
「担保は取ってないが、毎回タダ酒を飲ませる契約じゃろ?」
「ハハッ!わかってますよ。注文は串盛りといつもの酒で?」
「ああ頼む」
「なあ大将何で居酒屋に童がおるんじゃ?」
「童?ああ○○のことですかい?外来人だからそう見えるらしいけど、ああ見てもちゃんと成人しているそうで」
「なんじゃ。外来人か、ならしかたがないな。前なんか女にしか見えん男が紅魔館で下女をしたのをみたぞ」
「背は小さいし童顔だからあっしも初めて見たときは追い出そうとしたくらいでさ。あ、でも筆おろし済みらしいですぜ」
「外の世界じゃ普通じゃからな」
「何かよう?」
「酒は一人で飲むものじゃないからな。ちょいと一緒に飲んでくれないか?」
「悪いが何処か別の奴に頼んでくれないか」
「無論、タダとは言わん。酒代くらいはおごってやるぞ」
「金ならある」
「固いのぉ・・・・それなら」
「?!マミ・・・・ッ!」
「どうじゃ!儂は二つ岩マミゾウ、化け狸じゃ。これくらいなら・・・・・?なんで涙を流しておるんじゃ?」
「マニゾウは騙されているんだよ!」
「騙す?もう金貸しでもない儂を騙しても○○は一銭も得られんぞ?ぬえっこ。それに騙すなんて・・・」
「知っているんだよ!毎晩毎晩マミゾウが耳や尻尾を隠して○○の言うとおりの姿になって・・・えっと・・・その気持ち良いことを・・・」
「気持ちいいこととはなんじゃ?これだから未通女は・・・」
「そんなことはどうでもいい!アイツはマミゾウじゃなくてマミゾウが化けた女を愛しているだけなんだ!」
「儂がだまされているじゃと?」
「アイツは付き合った彼女を海で失って自殺しようとしてたら幻想入りしたって!前に言っていたよね?変化する時は必ずどこかを変えておかないと元の姿を忘れるって」
「儂は大妖怪じゃぞ!そんな三下みたいな失敗するかい!」
「じゃあ・・・・・何で今も耳と尻尾を隠しているの?」
長屋の暗闇の中、男女は獣のように交わる
亜麻色の髪をした少女はその身体に欲情した男性自身を受け入れ、熱く沸騰した蜜を溢れさせていた
そして男の瞳は濡れ、より強く彼女を抱きしめる
「○○!私の○○!」
「マミもう離さない!お前を・・・もうお前を海なんかに奪い取られてたまるか!」
部屋の片隅に転がる、土汚れが付いた写真
そこには○○と微笑む少女が写っていた
「2011年 3月 海にて」と記されて・・・
最終更新:2015年05月06日 20:48