夏の夜のソネット


今帰ったよ

夕食を作っておいてくれたのか?今日は僕の番なのにありがとうな

やっぱり外は暑かったよ

お蔭で、この旧地獄の涼しさが恋しくなったさ

今日は水風呂に入ろうか?


男は妻に話しかける
目に見えない、妻の古明地こいしに・・・

外来人長屋で精神科医をしている彼がこいしの姉である、古明地さとりに誘われて旧地獄に赴いたのは一年前。
彼がこいしをクランケから、恋愛対象になるのは時間の問題だった。
こいしは彼を愛し、彼も在り方を失った妖怪ではなく一人の女性としてこいしを愛した。
共に生きるため、彼は外界への未練を捨て、そして・・・人間であることも失った。
しかし、そのことは彼自身もさとりと同様にこいしを認知できなくなることになってしまった。

こいしは彼を愛し、彼は愛しき妻を見ることができなくなってもその愛は確かなものだった。

蚊取り線香が焚かれた閨。
夫婦布団には彼、○○一人が横になっていた。
○○は微かなぬくもりを感じ、そっとそのぬくもりの主を抱きしめた

「愛しているよこいし」

夏の夜は静かに更けていった・・・・






さとり「計画通り!」

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最終更新:2012年11月20日 11:24