やっぱり何回かに分けて投稿します。取り敢えず一回目、冒頭の部分を。

人形は恐ろしくも愛おしい。
人の形をしているがゆえに。

「人形遊び」



 人里の一角にて。何人かの里人とともに俺は美しい人形達の舞いを見ていた。操る本人が「全手動よ?」とか言っていたが到底信じられた話ではない。軽やかなメロディにのって踊る人形たちはみな可愛かった。音楽が終わると、中央の少女と人形達が同時にお辞儀した。
ア「皆様最後までご静聴、誠にありがとうございました。本日はこれにてお開きとなります。次回もぜひともお越しくださいませ」
上「ダマッテココニカネイレテケ」
観衆が帰りだし、何人かは上海の持つコップに気持ちを入れていく。自分も少ないが入れておいた。
ア「○○、いつもありがとう」
○「博麗神社に入れて君に入れないのは不公平だからな」
上「コンナハシタカネイルカ、モットダセ」
ア「こらこら」

 俺こと○○は数年前に幻想入りした。魔法の森に漂着(それ以外に適した言葉が思いつかないのでこう言っておこう)し、かの土地の瘴気にやられそうになっていたところを、彼女―アリス・マーガトロイド―に助けられたのだ。俺とアリスの付き合いはそれ以降続いている。命の恩人とだけあり、俺はアリスには何かと気を使うようになっていた。対するアリスも、俺に対してはフランクに話してくれていた。お互いにいい関係だといえる。ただ…

ア「相変わらず生傷が絶えないのね」
○「仕事が仕事なんだからしょうがないさ。自分で選んだ道だし」
ア「あなたが怪我してるのを見ると私が不安になるのよ。何のために助けてあげたのか分からないじゃない」
○「…分かってくれよ、俺達人間は君たちとは違う。寿命も短いし、妖怪ほど身体能力もない。ましてやその妖怪に襲われる側なんだから」
ア「嫌味言ってるの?『人間』から『妖怪』になった私に…」

 俺の「仕事」は、一口で言えば「自警団」だ。妖怪から襲われた人間を救出し、妖怪を撃退、可能であれば排除するのが、主任務である。もともと俺は外の世界でとある戦闘集団にいたため、幻想入りしてからしばらく後に、副団長からスカウトされて入団した。当然、妖怪との戦闘は避けられず、我々「人間」には弾幕なんて撃てないので、いわゆる「リアルファイト」が基本である。殉職者もしばしば出るし、怪我なんて日常茶飯事だ。俺はそんな所に就職したのである。情けないことだが、俺はこの仕事が気に入っているのだ。なぜなら…

○「男ってのはな、どんな世界でも戦わなきゃいけない存在なのさ…」
ア「お願いだから、死なないで…」
○「分かってるよ。こうして一人でも心配してくれる人がいる内は、死にはしない。約束する」
上「ヤブッタラジゴクヘツレモドシニイクカラナ。ナンセアリスハ…」
ア「う、うっさい!!」
上「\クソマァー!/」
ア「ったく…じゃあ、そろそろお暇するわ」
○「ああ、またな」
 アリスは人形たちと一緒に、森へ帰って行った。

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最終更新:2012年11月20日 11:44