捨てるということ

「何だって?……」
「当たり前でしょ?貴方が未だに過去に縛られてるから解放させてあげたの。」
「でも、あれは親父の形見だったのに!……」
「解らない?貴方が未だに仙人になれないのは未練を引きずっているからよ?
なるからには詰まらない過去を捨てて私の言う事だけ聞いてればいいの。」
青娥の弟子である彼は所謂外来人であった、真面目である彼は青娥の教えをどんどん吸収し、
壁抜けといった簡単な術なら会得できる段階まできていたが、それから何故か伸び悩み、彼自身も焦りを感じていた。
そして彼の師匠にあたる青娥は原因を見抜き、今に至る。
普通大事な物を捨てられれば誰もが憤りを感じるものだが……
「わかった、すまなかった。前に進まなきゃ道は切り開けないよな。」
「それで良いのよ。」

それから1ヶ月後、
彼は携帯やパソコン等の電子機器を捨てた。
「何故それらを捨てるのだ?壊れているようには見えぬぞ?」
「あぁ、屠自古様、もう電池が切れてて動かないなら要らないと思いまして。」
「電気をまた溜めれば良いのだろう?なら私に任せなさい。」
「いえ、良いんです。もう決めた事ですから。」
また1ヶ月後、彼は集めていた小説等の本を捨てた。
「これ、折角高い金払って手に入れた本を紐で縛ってどうするつもりだ?」
「布都様ですか、もう読み終わりましたし、邪魔なんで処分するんです。」
「何を言っておる!あんなにも感銘を受けた作家の小説が手に入ったと凄く喜んでいたではないか。」
「布都様、これはもう決めた事なんです、止めないで下さい。」

更に1ヶ月後、今度は道着以外の自分の服を全て捨てた。
「外に出してある服を仕舞わないのですか?あのままでは汚れてしまいますよ?」
「神子様ですか、殆ど外に出る用事が無いのでこれだけで良いのです、片付けるのも面倒ですしね。」
「ですが、せめて余所行きの服だけでも持ったらどうです?これは貴方の問題ではなくて私達の面子の問題です。」
「それは大丈夫です、青娥様が繕ってくれていますから、それでは。」
「……おかしい、最早人として最低限必要な欲すら薄れてきている、このままでは彼は……」

彼が自分の服を捨ててから半年後、博麗神社に小野塚小町が訪れていた。
「いよう、博麗の!」
「木偶の死神が何の用?冷やかしなら茶は出さないわよ?」
「つれないねぇ、ちったぁ小咄に付き合っておくれよぅ。」
「何なのよ?カビた死体共が暴れだしたわけ?」
「いや、まぁ元死人というなら正しいわな。最近生き返った豪族達に弟子入りした外来人が居たろ?」
「その弟子がどうしたのよ?」
「どうにもその外来人が死んだらしくてねぇ、物見櫓からの飛び降りだとさ。「自分の魂を捨てます。」って書き置き付きさね。」
「珍しいわね、生きるだけで精一杯なのに。」
「話はこれからさね、んでそこに所属してる仙人が生き返らせようとした、でも幾らやっても成功しない。
んで、出来ないと分かると彼岸までカチコミをかけてきた。たが場所が悪い。
法廷まで来たは良いが四季様は取り合いもしない、それどころか仙人だから刑を言い渡したのさね。」
「なにそれ、バッカみたい、可笑しいったらありゃしないわ!」
「随分と笑うもんだねぇ。」
「だって仙人が行きたくない所に突撃して自滅とか、全くわけが分からないわ。」
「そいで続きなんだが、刑を言い渡すのは四季様でも執行するのはアタイだ。
全く、魂の逮捕が疲れるから船頭になったってのに……」
「ま、鬱陶しかったから成敗してくれて丁度良かったけど。」
「他人事だと思って……まぁ結果的には仙人と外来人が消えたという事さね。」
「結局オチは何だったのよ?」
「オチは無いが命は落とした?」
「謎かけでも採用されないわよ……」


鬼女ネタを漁るとヤンデレネタに困らない困らない

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最終更新:2012年11月20日 13:22