復讐
板張りの道場に木刀を打ち合わせる音が響く
「弱い弱い!弱すぎる!!!だからお前は半人前なんだ!!」
妖怪の山警備隊長である 犬走 椛は足元に蹲る少女を罵る
少女の面影は椛とよく似ていたが、母親の銀のような白髪ではなく漆黒の黒髪をしていた
「もう・・・一度・・もう一度お願いします!母上!」
「母上ではない!隊長と呼べ!鈍間な亀が!」
「はい!隊長!」
今なら殺せる
あの犬女は直ぐに立ち上がれないだろう
目の前で忌まわしい赤子の首を捻ったらどんな顔をするかな?
無理やり契りを結ばされ、あまつさえ人間を辞めさせられたんだ
誰がこんな犬臭い赤子を愛せるか
「父上・・・・私わからない。私は母上の子供なの?」
「何を言い出すんだ。お前は椛と私の子だ。その黒髪と、凛々しい顔は私と椛の娘だよ」
「でも私は母上の気持ちがわからない」
「お前は言うなれば妖怪としてはイレギュラーだ。椛はそんなお前を鍛え、妖怪として一人前にしようとしている。娘のお前が親を信じないでどうする?」
「父上・・・・」
「さあ夕餉にしよう」
あの時、俺は本気でこの娘を消そうとしていた
でも、あの時娘は俺に微笑んでくれた
浅ましい復讐心で生を終わらそうとしていた俺にだ
その時・・・・涙がでた
俺はその時、初めて人間を辞めて・・・・親になった
あの子は私の娘
それは変わらない
でも・・・・・
あの子があの人と仲良くなるのは許せない
あの人があの子を殺めようとしたことは事実だ
そうするべきだった
そうすれば身も心も独占できたのに・・・・
私は病んでいる
自分の娘に嫉妬しているなんて・・・・
あなた気づいて?
私の嫉妬心を
じゃなかったら・・・・・
ワタシガアノオンナヲクイコロシテシマウワ
最終更新:2012年11月20日 16:57