「人形遊び」③


暗い魔法の森の中を、俺は走っていた。
いや、逃げていた。
武器はない、プロテクターもない、つまり丸腰でだ。
崖に辿り着き、すんでの所で落ちかける。
あの人形が追ってくる。歪んだ笑みを浮かべながら…
○○「うわぁぁぁ」
崖から落ち…たが、何かに受け止められた。
○○「何だ?!」
自分をつかむ無数の「手」。恐る恐る振り向くと…

「やっと捕まえたわ。もうこれであなたは傷付かないし。傷付かせない。私が守ってあげるから…」

あの人形と同じ笑みを浮かべたアリスが俺を見ていて―


○○「うわああああああ?!」
そこで目が覚めた。夢だったのだ。うん、頬が痛い。
○○「ちきしょう…」
なんなんだよこの夢は…

あれから俺達は謎の人形と交戦状態になった。だが俺としたことが完全に動揺してしまい、ろくに動けなかった。今まで何度となく妖怪たちとの戦闘を行い、彼らを撃破したことも何度かあった、その俺が、恐怖で動けなくなったのである。信じられないが、紛れもなく事実だった。結局目標には逃げられ、また毒により隊員が数名負傷した。

○○「アリス…」

頭をよぎるのは、あの人形遣いの事だけ。この幻想郷で人形といえば彼女しかいない。でも一体何故?なぜ彼女が無差別に人や妖怪を襲うのだ?
彼女は何度か異変の解決に参加した事があると聞く。しかし、ここ最近はたいして異変は起きておらず、仮に起きていれば我々が動いている筈だ。或いは、まだ大事になっていないだけか?分からない…
暫く悩んだ後、俺は自警団本部に赴いた。


その日の夜。俺は再び魔法の森にいた。今度は一人でだ。
本部で俺は、団長に先日の失敗を詫び、責任をとる為この一件を俺に任せてほしいともちかけた。
団長は俺の申し出を受け入れ、結果で俺の今後を決める、と言われた。俺自身、敵の目の前にいたのに何もできなかったままでは嫌だった。
絶対にこの一件、真実を暴いてみせる。
昨夜の悪夢が蘇ってくる。
裏でアリスが糸を引いているのだとすれば、俺にしか彼女は止められない。何故かは分からないが、そんな確信があった。証拠は見当たらないが、「わかる」のだ。

カタ…カタ…キリ…キリ…

来た!!
昨夜も聞いた、関節同士が軋む独特の音。間違いない。あいつだ。あの人形が現れたのだ。

さっと振り向くと、人形のほうに向けて銃を突きつけた。
○○「動くな!」

俺が叫ぶと、人形は意外にも素直に止まった。もちろん、拍子抜けするようなことはせず、険しい顔を続ける。
○○「お前の目的はなんだ?なぜ無差別に人や妖怪を襲った?お前はやっぱりアリスが作った存在なのか?答えろ!」
すると、人形は元々表情がないはずの顔に、悲しげな表情を浮かべた。
不気味だ。

人形「ごめんなさい…パパ…」

頭の中が真っ白になった。

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最終更新:2012年11月20日 17:03