「人形遊び④」
人形「ごめんなさい…パパ…」
頭の中が真っ白になった。
何を言っているんだ?父親だと?俺が?
そんな馬鹿な。俺は人形が作れるほど器用じゃない。
お前は何を言っているんだ?
暫く対峙していると、不意に人形が駈け出した。見ていて不安定だが、転びもせずに闇に消えて行こうとする。
「待てぇ、逃がさんぞ!」俺も後を追い始めた。
奇妙な、既視感。昨夜の夢とよく似た構図が、今、現実として俺の前に広がっている。違うのは、追う側と追われる側が逆である事。
悩んでいる時間はない。今はただ、逃げる人形を追いかけていた。
その夜は何となく寝つけず、ランプを灯して読書をしていた。こんな日はあえて寝ずに、夜を過ごすのもまたいい。
横には私が作った人形たちが座っている。
私は友達が多くはないが、この人形達は私のそんな孤独を癒してくれる。
私の友達であり…家族。
ドゥン…
アリス「?」
家の外から、何か物音がした。
アリス「
魔理沙かしら?」
座っていた椅子から立ち上がり、玄関の方へ行く。
ドンドンドン…
アリス「!」
足が止まる。三回ノックは、彼が来た証。私の家に彼が来たときは、必ず家に入る前に三回ノックするのだ。でも、なぜか、自分からドアを開けづらかった。何故?
アリス「○○ね?どうぞ入って下さいな」いつも通りの声で、彼を招く。何を困惑しているんだ、彼が来ただけ。そう…
ガチャ…キィィィィィ…
ドアが開き、そこにいたのは、自警団の戦闘服に身を包み、右手にライフル、左手に見覚えのある人形を掴んで、まるで額縁の中の絵の人物の様に立ちすくむ、鋭い目の○○だった…
玄関を開けた俺を迎えたのは、明らかに驚いたアリスだった。普通なら「何ビビってんだよ~」とでも言う所だが、今日はそうも行かない。仕事で来たのだから。
アリス「ど、どうしたの○○?こんな夜遅くに来るなんて珍しいわね」
○○「これを見ろ…」
俺は左手に掴んだ人形を、アリスに突き付けた。
○○「ここ最近俺たちを手こずらせていた、無差別殺傷事件の犯人だ…。どう見ても人形だよな?この幻想郷で人形といえば、アリス、お前だ」
考えるより先に言葉が出る。
○○「お前が作ったのか?そうだとしたら何の目的でだ?あれだけ俺が妖怪とドンパチしてるのを嫌がってたお前が、何故俺たちの仕事を増やした?答えろ!」
アリス「はぁ…」
アリスは溜め息を一つ吐くと、近くにあった椅子に座りこんだ。
アリス「どうして…」
○○「なんだ」
アリス「どうして貴方がそれを持っているの…?それは確かに私が作った人形よ…『あの子』の為に…」
○○「『あの子』…?」
アリスは顔を上げ、淀んだ瞳で俺を見た。そして
アリス「私達の…娘に決まってるじゃない」
続く
最終更新:2012年11月21日 12:23