霊夢/15スレ/956
それは約束だった。
1人の巫女と、1人の男性の。
ずっと一緒に居よう、ずっとキミの傍に居ると。
その約束は、2人に通う愛情によって、必ず叶えられる。その筈だった。
「……約束だから、守って貰う、わよ」
瀕死になった○○。
事故により完全に手遅れになった彼の前で、巫女は静かに呟いた。
それから数年が過ぎた。
幻想の郷は普段と変わらず人妖は日々を営んでいる。
その郷を守る結界の中心点である博麗神社も同じ事。
定期的に宴会が行われ、巫女はトラブルの解決以外は無重力な生活を繰り返していた。
ただ、変わった事と言えば。
離れが1つ。いつの間にか増築された事。
そして、その離れには霊夢以外は近づけず、その仕組みには管理者の力すら添えられていたという。
霊夢は普段通りだった。今も昔も変わりなく、無重力な彼女だった。
その、離れの中、以外では。
薄暗い離れの中、ぼんやりと燭台の明かりが揺らめいている。
灯りは周囲に漂っているお香の煙を、うっすらと映しだしていた。
術式が隈無く編み込まれた着物を着た男性を、霊夢は膝枕していた。
彼女の手には筆が握られており、筆の先端には紅が付いていた。
彼女にとって彼と共にこうして過ごす事が何よりの幸せだった。
だが、前々からちょっと気になっていた事がある。
口紅の色がちょっと不健康な感じがするのだ。色が薄いというか。
彼が離れに入る前、彼の唇は男性にしてはちょっと赤すぎるかな、という位だった。
そんな彼の事が全て好きだった霊夢にとって、色素が薄い状態はちょっとだけ気に入らないのだ。
器用な手先で唇に紅を塗っていく。不自然ではない色合いに調節している辺り、彼女の器用さが窺える。
「あっ……」
霊夢が少し驚いた面持ちで小さい声を上げた。
ぼんやりと見開いた男の虚ろな瞳から、すっと涙が流れ落ちたのだ。
霊夢は顔を近づけると頬を伝った涙を舌で舐め取り。
目尻に溜まった涙をそっと啜り取った。
「泣く必要なんて無いわ○○」
霊夢は再び筆を動かしながら○○に囁く。
「2人でずっと一緒なんだから。私は、とても幸せよ」
反魂のお香と、死神反らしの結界。服に編み込んだ封魂の法術。
死の直前で全てを止められた○○を抱き締めながら、霊夢は穏やかな笑みを浮かべ愛を囁いた。
感想
最終更新:2019年02月02日 15:22