霊夢/15スレ/991




霊夢のネタでひとつ。ドッペルゲンガー的な。


あれ、とその時はそう思った。
次に思っていたのは、そうだ。声をかけようとしていた。
でも、何て話しかければ良いんだろうか。
その時には、僕はもう声をかけていたのだが。

「レイム!!」

僕の声を聞いたからだろうか。その女の子は僕を見るなり驚いた顔になった。
その表情はやがて喜びの表情となったが、女の子はどこかへと去ってしまった。
「……? レイム、だよなぁ」
「何よ」
背後から急に声が聞こえた。
「うわ!!」
「失礼ね。人の名前を大声で叫ぶ方がよっぽど失礼じゃないの?」
「う、それはそうだけど」
改めて女の子の去った方を見た。けれども勿論、その方向には何も無くて。
「ほら、帰るわよ。○○」
「うん……わかった」

次の日も、僕は彼女を見た。
「あ、昨日の」
「……」
彼女は喋らなかった。
嫌われたのだろうか、それとも会話する気が無いのか。
「あの、さ。君、何て名前なの?」
僕は彼女に遠慮がちに訊いた。
「……レイム」
へぇー、と素直にそう思った。
「僕の知りあいに君と同じ名前の人がいるんだ。神社で巫女をしているんだ」
「……そうなの?」
もしかすると、苗字も同じだったりして―――
「誰が巫女よ」
「うわ!!」
「昨日と同じリアクションは感心しないわね。誰と喋っていたの?」
若干不機嫌そうに彼女は言った。
「あ、そうそう。この子が―――」
振り向いて、あれ? と思った。
いない。
さっきまで会話していた筈だ。
なのに、いない。どこにも、いない。
「神社抜け出して密会だなんて……いい度胸してるじゃない」
「ちょ、密会だなんて! 誤解だ!」

次の日、僕は軟禁されていた。
ご丁寧に縄で縛られております。
ご飯? 食べておりませんよ。
「……あの」
声がした。その方を見ると、昨日の女の子がいた。
……久しく普通の巫女服を見た気がする。脇の出た巫女服ばかり見ていたから。
誰かのによく似たリボン、紫の髪。巫女服。
「……大丈夫?」
「どうにか。お腹は減ったけどね」
ぐぅ、と腹が空腹を訴える。オナカスイタ―、とのたまうつもりだろうか。
「……」
「あのね、良かったら、これ」
何処からか風呂敷包みを前に出し、解く。
中にはおにぎりが包まれた包みが二つ、入っていた。
「……いいのか?」
「うん。その為に作ってきたの」
微笑んだ彼女を見て、とてもではないが直視できなくなった。
その笑顔がとても、可愛らしかったから。

―――なんで。
なんで私に笑顔を向けてくれないの?
君は僕にそう言ったね。
この際だから言わせてもらうが、僕を監禁する奴にどうして笑顔を向けられるんだ?
あぁ、監禁だけならまだ、許せたさ。
でも、もう遅過ぎるんだよ。
僕はもう、君を好きだとは思わない。
お前なんかのものには、ならない。

「聞いたわよね? これで彼は誰のでもない」
「でも、あんたのものにはならないわ」
「だから、私が貰うね?」








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最終更新:2019年02月09日 18:56