浅知恵


外来人長屋
ここに住む人々は皆希望を抱いて、門をくぐる。
されど待っているのは絶望。
お布施をある一定の金額を納めたら、外界への帰還が可能になる。
しかし・・・

或る者は妖怪に襲われ、命を散らし

また或る者は前途を悲観し、自ら命の火を消した

絶望に打ちひしがれた者は長屋の門に、こう彫り込まれていることに気が付く

「この門をくぐりし者よ、全ての希望を捨てよ」と・・・


外来人○○
その肢体を彩るものは漆黒の女性物のショーツと金糸をあしらったブラジャー
無論、PADも忘れていない。
彼は別段好きでこのような恰好をしているわけではない。
止むにやまれぬ事情があるのだ。

「強制婿入り」

外来人たちが直面する最大の危機。
神、妖怪、はては人形まで、外来人を自らの伴侶とするのだ。
要らない存在なのに、なぜ此処では必要される?
多くの外来人がその疑問を感じるが、誰もそれを答える者はいない。
伴侶となった外来人に待っているのは「動物園の動物」としての生活。
永遠に解放されることはない。

○○は解決方法として、「僕ちゃんは変態な女装青年でちゅう~」作戦を実行した。
こうすればなまじプライドの高い女妖怪は寄ってこないはずだ・・・・が。


○○は絶望していた。
彼にソウルジェムがあったなら、間違いなく魔女化したであろう程の絶望だ。
彼は生業として、居酒屋を営んでいる。
以前別の外来人が経営していたが、「気配のわからない食い逃げ事件」が多発したのち失踪してしまった。
それ以来、彼は女装し店に立っていたのだ
今彼の目の前には、店の全てのメニューを食べまくるカービィ幽々子もとい、西行寺ピンクがいた。

「昔は宮中では、成人するまで女装をして過ごすのが普通だったわ~○○は青年だけど私からしたら幼児同様だから、お姉さん問題ないわ~」

そしてまたその隣では・・・

「今ある姿に満足せず、奇矯な振る舞いをすることは心の乱れ。故に徳のある人間について研鑽を積むのが本道!」

女僧が酒場でラフロイグを飲んでいいのか?と疑問を持つが、ボトルネックを手の平でへし折って、ラッパ飲みというあまりにも漢らしい飲み方に声をかけるのをためらう。

「屁理屈と軟膏は何にでもつく」真理である。
人の一生以上の時間を過ごした彼女たちに彼の浅知恵は無力だった。
その二週間後、長屋に○○の姿はなかった・・・・

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最終更新:2013年04月01日 18:08