火傷男のその後


1人のカンタダは蜘蛛の糸を手繰って天へと上がった。
その先は既に語られた通りである。

では、糸が途中で切れて地へ墜ちたカンタダはどうなったか?



竹林の奥深くに建てられた家。
そこで二人の少女が軒先に座っていた。
彼女らは幸せそうに、己の大きくなった腹を優しく擦っている。

本来なら自分に種を付けた男を巡って文字通り殺し合いをしそうな二人が、何故仲良く暮らしているのか。
旧知の仲だから? 友人だから? 違う。その程度ではとてもこうはならなかっただろう。

不可思議な現象、突然天へ向けてかけられた坂は、僅かな後に消え去った。
その後、ボロボロの姿で戻ってきた彼女達の男は、二人に宣言したのだ。

三人で仲良く暮らそうと。

今まで、二人の少女は男に愛を注ぐばかりだった。
注いでも男はどこか壊れていて、彼女らの愛は漏れ出てしまっていた。
それでも二人にとっては構わなかったが、二人同時に愛してくれる容量を持たなかったのも事実である。
その為、次第に殺し合いへと変わってもおかしくなかった少女達は……男の変異によって救われたのだ。

男は平等に二人を愛し繋ぎ止め、女達も男を愛し繋ぎ止めた。
三人が交互にかけたくびきはより強固になり、男女を永遠に拘束していく。

二人は、どうして男が変わったのかについては問わなかった。
男が『諦めた』事について問わなかった。
少女達にとって肝心なのは、愛してくれる事、自分達と共に添い遂げてくれる事。

「うふふ……幸せだな、慧音」「ああ、幸せだなぁ、妹紅」

ゆらりと竹林の間だから現れた、彼女達の愛すべき男を見つけ、二人は怖気が走るような愛に満ちた笑みを深々と浮かべた。



糸が切れて墜ちたカンタダはどうなった?
二匹の女郎蜘蛛が出した糸に絡まれ、愛という名の地獄へと堕ちました。

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最終更新:2013年04月14日 15:46