夢(てんごく)と現実(じごく)
○○「なぁ、
魔理沙。」
魔理沙「どうしたんだ○○?」
○○「なんでお前は俺の家に勝手に入って来てるんだ?」
こいつの名前は「霧雨 魔理沙」。
俺がここ「幻想郷」に来てからできた初の友人であり、俺の恩人でもある人物だ。
魔理沙「何でって・・・そりゃあ、私が○○の作った飯を食うためだろ。」
・・・そうだったな。
こいつはいつもこんな風に飯をたかりに来る
仮にも命の恩人なので追い出す真似などできる筈もなく、お礼に一度くらいはと引き受けてしまったのが始まりだ。
俺の飯が気に入ったのか毎日の様にやってくる。
今では1日も空きを作る事無く毎日、朝と晩には必ず来る程だ。
魔理沙「○○―――」
○○「ああ、ほらよ。」
魔理沙の声に、あらかじめよそっておいた茶碗いっぱいの白米を差し出す。
魔理沙「サンキュ、・・・へへ、こうしてるとまるで夫婦みたいだな。」
――またか。
最近の魔理沙は事あるごとに俺達の関係を夫婦に例えてくる。
○○「もし夫婦だとしたら立場逆だけどな。」
・・・まぁ、そんな返事をする俺も満更でもないのだが。
その後も変わった事の無い会話を続け、この場はお開きとなった。
―人里―
俺は食材や道具を買う為に人里に来た。
この人里の文明レベルの低さにも慣れ、住人とも仲良くなった。
○○「・・・ん?」
少し離れた所で魔理沙が誰かと話しているのを見つけた。
あれは・・・
アリスか。
そういえば彼女も人里に人形劇をしに来ると言っていたな。
なにやらもめているみたいだが・・・。
○○「どうしたんだ?」
魔理沙「っ!○○・・・!何でここに・・・?」
魔理沙はなにやら焦った様子だ。
アリス「○○!目を覚まして!ここは現実じゃないのよ!」
は?急に何を言い出すんだアリスは。
ここが現実じゃない?
魔理沙「○○。こいつ今、変なキノコ食べておかしくなってるんだ。あまり本気にしない方が良いぞ?」
アリス「いいえ○○!これは本当よ!思い出して、貴方の本当の恋人は――!」
瞬間、アリスに光弾が当たって崩れ落ちる。
その発射元を辿ると、魔理沙が居た。
魔理沙「悪い○○。思ったよりも症状が酷いらしい。ちょっと永琳の所に行ってくる。先に家に戻っていてくれ。」
○○「あ、ああ。分かった。」
魔理沙は気絶したアリスを引きずってどこかへ行ってしまった。
・・・俺の本当の恋人?そもそも恋人なんて居ない。
強いて言うなら魔理沙が一番近い存在で――。
その時、頭に軽い痛みが走った。
―数日後―
あの後アリスは永遠亭で様子を見る事になったらしい。
・・・それにしてもアリスのあの言葉が引っかかる。
恋人・・・?
魔理沙はそのような存在だが正式な恋人ではない。
アリスも違う。そんな関係になった覚えは無い。
霊夢も違う。良い友人ではあるが。
大ちゃん?いや、彼女は――
・・・待てよ?大ちゃんなんて幻想郷に居たか?
俺は幻想郷に来て・・・魔理沙に飢え死にしそうな所を助けて貰って――。
違う、俺は大ちゃんに助けて貰って霊夢の所に行ったんだ。
家を建ててからも大ちゃんは手伝いに来てくれて・・・。
俺達はいつしか恋人になったんだ。
大ちゃんの事を思い出すと同時におよそ3年近い分の記憶が流れ込んでくる。
○○「そうだ・・・あの日、魔理沙の家に呼び出されて・・・!」
得体の知れない恐怖が襲いかかる。
――早くここから抜け出さないと!
気が付くと、俺は鎖に繋がれて魔理沙の家に居た。
鎖に弾幕をフルパワーでぶつけて立ち上がり、走り出す。
○○「大ちゃん・・・!」
魔理沙の家の扉を開き――俺の思考は停止した。
目の前には地平線まで広がる荒野。
これでは妖精どころか生物すらも存在できないだろう。
俺は呆然としたまま崩れ落ちる。
魔理沙「あーあ、魔法が解けちまったかぁ。」
魔理沙が家の中から頭を掻きながら出てくる。
魔理沙「見ての通り、現実の幻想郷はこんな有様だ。住人はほとんど別の結界で保護された場所に行っちまった。」
魔理沙「お前を救おうと残った奴らはもう皆、私が始末したぜ。」
もちろん、自称お前の恋人もな。と勝ち誇った笑みを浮かべる魔理沙。
魔理沙「もうここに居るのは私とお前だけだぜ?蓬莱人になった・・・な。」
魔理沙は思考停止した俺を再び魔法陣の上に引きずる。
魔理沙「○○は夢の世界で幸せに私と暮らしていてくれ。私も邪魔者を送り込んでくるあいつ等を殺したら行くからさ。」
魔理沙「おーい!○○!準備できたぜー!」
○○「ああ!今行くからさ!」
俺と魔理沙は今日結婚式を迎える。
周囲に冷やかされながらも皆、その顔には笑顔を浮かべている。
――○○さん――
○○「・・・ん?」
魔理沙「どうした?」
○○「いや、今誰か居た様な・・・。」
その場所を凝視するがやはり誰も居ない。
魔理沙「気のせいじゃないか?」
○○「・・・そうかもな。」
しかし、何だったんだろうか?
今の可愛らしい緑髪の女の子は―――
夢(てんごく)と現実(じごく)
―完―
感想
- 魔理沙も不老不死になったのか? -- 名無しさん (2020-01-28 19:31:34)
最終更新:2020年01月28日 19:31