「藍様~!」
モフり、という効果音がよく似合いそうなタッチで大きな尻尾に抱き着く。
「うわっ!?・・・って、〇〇!?何してるんだ!」
「そこに尻尾があったから・・・」
「『あったから』じゃない!!まったく毎度毎度マヨヒガに来る度に私の尻尾に抱き着いて!」
「でも、藍様もまんざらじゃないって顔して・・・」
途端に藍の顔が真っ赤に変わる。
「あれ?当たった?」
「ち・・・違う!離れないか!」
「ぐはっ!?」
〇〇が脳天にチョップをくらってのた打ち回っている。
「か、顔で内心を判断するのは間違ってるぞ〇〇!それと、私のことは藍と呼べと言ったはずだ!」
「ちょっと・・・待って・・・下さい・・・」
瀕死になっている〇〇を担いで居間へと移動する。枕は・・・無かったので仕方なく尻尾を枕代わりに。
「あぁ~、もっふもふ~」
「懲りない奴だな、お前は・・・。ところで、さっきの話は聞いていたか?」
「サーイエスサー。だって、藍様があんなに真っ赤に・・・」
ペチン、と額を叩かれる。
「あてっ」
「そ、それはだな!最近暑くなってきたから・・・ゴニョゴニョ・・・。あと!もう一つ忘れてるぞ」
「・・・流石に大妖怪様を呼び捨てなんて・・・」
「尻尾をこんなにモフるくせに、そういうところだけは・・・まったく」
藍が優しく微笑む。さながら聖母のごとく。
「ところで、なんでこんなに尻尾を触りたがるんだ?その・・・そんなに気持ちいいか?」
「それはもちろんですけど・・・やっぱり・・・うん、橙の気持ちを知りたいなぁ・・・なんて」
ピタッ、藍の笑顔が固まる。しかし、〇〇はその変化に気が付いていない。
「その・・・藍様に相談するか悩んでいたのですが、俺・・・橙のことが好きでして。べ、別にロリコンってわけじゃないですよ!ただ・・・可愛いなぁって」
〇〇は赤面している。・・・ワタシニハミセタコトナイエガオデ
「〇〇」
「あっ、はい。なんでしょ・・・むぐ!?」
九尾の尾が〇〇の体に絡みついて動きを封じ、口も閉じさせる。
「もごぉ!もごぉ!」
「ふふ、〇〇。これが何かわかるか?」
「?」
「これはな、生命体を強制的に式神に出来る符だ。以前に紫様が許容と拒絶の境界をいじくっていた時に偶然出来た代物でな。使うことはないと思ってはいたが・・・ここまで言えばわかるな?」
「むぐむぐむぐ!」
「〇〇、お前が悪いんだぞ?私の気持ちに気付かないから・・・」
そう言ってゆっくりと〇〇の額に符を近づけて・・・。
ある日から、幻想郷に噂が流れ始めた。幻想郷の管理者八雲紫・・・その式の八雲藍の式神が橙ではなくなっていると。
しかし、最近では滅多に姿を見せなくなったので、真実は定かではない。今では連日、鴉天狗が真相を探るべく空を飛びまわっている。
「どうぞ藍様、お茶が入りました」
「ありがとう〇〇。・・・藍と呼べといつも言っているだろう?」
「あっ、すいません。なぜか口から無意識に出てしまいまして・・・いったいなぜでしょう?」
「そうか、ふふ・・・それなら仕方ないな。まったく可愛いなぁ、〇〇は・・・」
最終更新:2013年07月02日 09:05