「そこの人間!」
「お前は確か・・・永遠亭の・・・」
「ふふ、私がお前のことを幸せにしてあげてもいいウサ!」
「はは、断る」
「なぜ!?私のことを知ってるなら能力も知ってるんじゃ・・・」
「あぁ、知ってるとも。でもな、ここ最近被害報告が無いからって、人様に迷惑かけるような嘘つき兎の言うことなど信じられるか!」
兎が顔面蒼白になっている。いい様だ、俺自体は被害を受けていないが、過去に俺の友人が今後の生活に支障をきたすレベルの被害を受けたのだ。
そんな奴がついに俺にまで被害を及ぼそうとしているのだから堪ったもんじゃない。きっと、いままでなりを潜めていたのも新しい悪戯でも考えていたのだろう。
しかし・・・ついには泣き始めてしまった。だが、騙されるな俺。嘘泣きなんて典型中の典型だ。・・・そうやって湧き上がる良心を止める。
「ちっ、じゃあな!」
俺は兎の脇を逸れて進んでいく。
「!?ま、待って!そっちに行っちゃ駄目ウサ!」
すると、先ほどまで泣いていたはずの兎が俺にしがみついてくる。ふん、やはり嘘泣きだったか・・・跡のようなものが見えるが気のせいだろう。
「うるさい!離れろ!汚らわしい!」
「お願い!お願い〇〇!話を!・・・・・・あ」
俺は抵抗を止めた。そして・・・
「おい、お前なんで俺の名前を?」
「・・・ち、違うの。こ、これはね・・・」
「ま、まさか俺の周りのことも・・・?」
「え、えと・・・・・・」
「・・・く、ここまでとは思わなかった!消えろ!」
そう言って、兎を突き飛ばし全力で駆けだした。
「だ、駄目!〇〇!」
後ろから俺の名を呼ぶ声が聞こえるが知ったこっちゃない。
俺はその声を無視し、駆け抜け・・・大地が無いことに気が付いた。
「あっ・・・」
「〇〇ぅ!」
私の前には竹やりで串刺しにされた〇〇が穴の中にいる。この罠は〇〇の家の近くにいた猪を落とすための物だった。
一目惚れして、なんとか力になろうと思って、身の回りのことを調べて、その過程で名前を知って、猪の被害が出ていることがわかって、悪戯もせずに〇〇の行動を調べて、家の近くで一月の間に一度も通らなかった道に罠をはって、成功したら褒めてもらおうと思ったけど、我慢出来ずに話しかけちゃって・・・。
「な・・・んで・・・こんな・・・」
〇〇はもうこの世にいない。でも、今この目の前にいる。どうせあの世に行っても〇〇とは一緒になれないだろう。それなら・・・それだったら・・・
兎は最愛の人がいる死の穴に身を投げた。
最終更新:2015年05月22日 00:12