今更ながら>>286続き
※微グロ注意
「こーんにーちはー」
てゐの声が小さな部屋いっぱいにひろがる。
「あ、てゐさん」
しっかりとした返事。よし、今日は特に何もしてないみたいだ。よかったよかった。
私は床に荷物を置く。最初のころよりすっかり少なくなったそれは、とても軽かった。
「はい〇〇、背中出して」
ぺろりと服をまくる。痛々しかった傷はさすがお師匠様の薬、すっかりよくなっていた。
私がここに来れるのは、あと何日か。
そこまで思って私ははっとした。なぜ、少しさみしいのだろうか。
「いた、てゐさん少し痛いです」
〇〇が苦笑しながら訴える。あぁごめんと私は優しく背をなでる。
人間の背。それはこんなに大きなものだったっけか。忘れてしまっていたよ。
さて、治療も大体終わったので待ちに待った家事タイム。
生きる気力のあまりない〇○の代わりに家事をするのは、楽しかった。
「ほら、頼ってばかりじゃいけないよ?買い出しにでも行くといいよ」
「えぇ、でも…」
「ほらこれ。」
ぴらりと紙を渡す。○○がいやそうにしながら出かけて行った。渋々、というところだろうか?
私はくすくすと笑う。
なぁんだ〇〇、外へ出ていけるじゃあないか。
「ただいまです」
「おかえり〇○」
私はにっこり微笑んで〇○に慰めの言葉をかける。
あったかいごはん。綺麗になった部屋、衣服。とりあえず回収した小型ナイフとながいロープ。
永遠亭にいたときは暇、そう、平和そのものだった。でもこうやって日々の刺激を受けられる〇○との生活も悪くない。
…生活?
何を言っているんだ私は!そう、少しの間。
〇○の怪我が完治するまでの間だけだ。
心に引っ掛かった何かに気づかないふりをして、私は〇○の部屋から出た。
「またね、死ぬんじゃないよ?」
次の日。
私は治療がてらいろいろな世話をした。
〇○がお礼を言う、それがとても面白い。
永遠亭にいるときは決して感じられない優越感、満足感。
あぁ、幸せだなぁ。
私は人間にシアワセを運ぶウサギなのに〇○は私を幸せにしてくれるのか。
私もなにかしなくちゃな。
数週間がたった。
〇○の傷は完治した。お師匠様と〇○に嘘をついて、まだ〇○のもとへ通っている。
〇○は外に出れるようになった。
たくさん、人とはなせるようになったし、私の助けがあまり必要なくなった。
あぁ、少しさみしいなぁ。
人に思い入れなんてするもんじゃないね。
私は苦笑した。
「あ、てゐさん!来てたんですね」
買ってきた食材を床に置いてにこにこと寄ってくる〇○。
少しうれしい。
「やぁ。元気かい?」
「えぇ、そりゃあばっちりと!あ、そういえばですね?さっき隣の人から聞いたのですが、ウサギナベっていうのがおいしいらしくて。僕もたべてみたいんですけど第一ウサギナベって何かわからなくて。てゐさんしってます?」
純粋な目で私を見る〇○。
あー…もうそんな季節か。ウサギを安全な場所へ避難させなきゃなぁ。
…食べたい、か。
「よし、○○。明日ふるまってあげるよ。」
私はのこやかにその要求をのんだ。
暗い竹林。てゐは考えふけっていた。
「あー…あんなこと言ったけどウサギを犠牲にするのはいやだしなぁ…だからと言ってごまかせるわけないし…それに、○○に何かしてあげたいしなぁ」
悩むてゐ。
ウサギ。犠牲にしたくないし…
…待てよ?
「あ、私…」
何を迷っていたんだろう。ウサギならいるじゃあないか。近くにいて、まるで存在自体を忘れてしまいそうな。
「…ふふっ」
よろこんでくれるかなぁ。
…グチ、グチャッ
私の、
ブチッ、グチチッ
私の、
「っぐぁあああああ!」
このくらいでいいか。あまりにも痛い。でも、でも。
私だってウサギだ。
きっと、美味しいに決まってるさ。
私は自身の肉が入った袋を満足そうに見て、永遠亭に帰った。
お師匠様への言い訳を考えながら。
次の日。
「こんばんは〇○!」
私は〇○の部屋へいく。
「こんばんはてゐさん。…あれ、それは?」
「ウサギナベに使う材料さ。○○、ゆっくりしててね。」
「いえ、腕…」
私の腕には包帯が巻かれている。まぁいいじゃんと言い訳をしながら私は調理に取り掛かる。
まぁ調理法といっても普通に鍋を作ればいいだけだ。
私は基礎を作り終えた後、肉の袋を開ける。
むせ返るような血のにおい。
わたしはにこりと笑って仕上げをする。
あはは、○○。
私を食べて?
「できましたよー」
何食わぬ顔で〇○に持っていく。
いただきます、と聞こえて肉をほおばる音も聞こえる。
どこかぞくぞくとするその行為に、私はすっかり虜となっていた。
「あれ、てゐさんは食べないんですか?」
「あっはっは。○○のためにつくったんだから〇○が食べてよ~?」
…食後。
空になった鍋をみて私は満足げに微笑む。
「ごちそうさまでした…」
「…おいしかった?」
「えぇ!」
そんな〇○の顔を見て、心の中がシアワセで満たされるのを感じた。
最終更新:2013年07月03日 12:02