今度はヤンデレメインになっている・・・はず!
突然だが、俺は死んでしまった。
死因は転落死だ。
なんでそんなアホな死に方をしたんだと思う奴もいるかもしれないが
あの時は必死だったんだ。俺の彼女から逃げようと必死だった。
俺の彼女は人間ではなかった。詳しくが知らないが、幻想郷でもかなり重要な仕事についているらしい。
例によって空を飛べれば弾幕を放てる。
俺は背後から彼女が飛んできていないか、弾幕が放たれていないかばかりを気にしながら逃げていて
前方の注意が疎かになっていた。
そうして転落してしまったわけだ。
どうして彼女はああなってしまったのだろうか?
おかしくなる前は、公明正大でお固いところはあったが時々見せる女の子らしいところが魅力的な女性だった。
そんな彼女のことが大好きだったし、彼女も何故かは知らないが平凡な俺を愛してくれていた。
人間じゃないとか、俺より強大な力を持つ存在とか、そんなのは気にならなかった。
彼女と付き合い始めたのがきっかけで外来人であった俺は外への帰還をやめる決意をした。
最初に俺が彼女の異常な行動を目の当たりにしたのは、人里でお世話になっているおやっさんの娘さんが
あまったおかずをおすそ分けしてくれた日のことだった。
食卓は潤うわ、美人さんと話せたわで俺はご機嫌だった。
ほら、彼女がいるいないは別にして美人と話せて嬉しいってのは男のサガみたいなものだろ?
突然だった。
俺が別のおかずの準備を台所でしている時だった。
俺んちの玄関の扉をものすごい勢いで開けて彼女が入ってきた。
デートの日付は前回会ったときに決めるし、約束がない日に遊びに来ることは今までにあっても
こんな夕飯時の遅い時間から家に来ることは初めてだったので、俺は驚いた。
なによりも驚いたのは彼女の様子とその行動だった。
彼女の表情は今まで見たことがないような、鬼の形相をしていた。
そして彼女は、荒れた様子で、いきなり先程おすそ分けしてもらったおかずを捨てろと言ってきた。
俺は人からいただいた物をそんな扱いできないと反論し、少しの間問答が続いたが彼女はおすそ分けしてもらった
おかずの皿をつかむとそのまま開けっ放しだった玄関の外まで持っていき、皿の中身を地面にぶちまけると何度も
踏みつけた。
その日から彼女に異常な言動が見られるようになった。
主にデートなどで顔を合わせた際に、売り子の娘に愛想をふりまくなや、あの女の家に行くな(おやっさんに誘われておやっさんの家で酒を飲んだ)
などをキツイ口調で言われるようになった。
別段、浮気のような行動はとっていないはずなのだが、他の女性との接触を極度に嫌がり癇癪を起すようになっていた。
行動を制限されるようなことを命令されるのも嫌だったのだが何よりも不気味だったのは、
彼女が人里にいないはずの間、例えば彼女が仕事をしているであろうタイミングに起こったことも全て把握していることだった。
彼女が人間ではないことも大きな力を持つ存在であることも気にはならなかったが、
彼女のそういった行動に対しては嫌悪感がひどかった。日々、エスカレートしていく傾向にあったのも気になった。
我慢ができなくなった俺は、ある日彼女を人里のはずれに呼び出し、別れ話を切り出した。
それが失敗だった。俺は彼女と別れた後のこと、例えばこれを機に外界に帰ってみるかなど楽天的に考えていたが
こんな異常な行動をとる彼女が素直に別れてくれるはずがなかった。
今までで一番の癇癪だった。
鬼の形相で許さない許さない許さないと間に呼吸も入れずに叫び続けていた。
怖くなった俺は逃げ出した。彼女の様子から人里に行っても何にもならないと思い、彼女から逃げることだけを考え、
木々の生い茂る山に入った。
途中までは何故か追ってこなかったが、山の中を進んでいる途中で、だいぶ距離をとったはずなのにも関わらず、彼女の絶叫が聞こえた。
その絶叫はこちらに近づいているのがわかると俺はパニックになった。
彼女は飛べるうえ弾幕を放てる。
だから俺は背後から彼女が飛んできていないか、弾幕が放たれていないかばかりを気にした。
前方が道がなくなり、絶壁のようになっているのを前を気にしていれば気付き、走る方向を変えられただろう。
逃げるのに必死で、パニックだった俺はそんな余裕もなく、何十メートルも落下し、死んだ。
俺は死んだ。
だが、死ねて幸せだったかもしれない。
あそこで落ちていなかったら、俺は恐らく彼女から逃げきれなかっただろう。
半狂乱の彼女に捕まっていたらどうなっていたかわからない。
よくて監禁、悪ければ死なない程度に拷問まがいなことをされていたかもしれない。
死んで無に帰すのではなく、こうやって三途の川を渡りながら考え事ができるのだ。
死んで彼女から解放されたと思えば十分幸せだ。
もっと長生きしたかったというのも正直な気持ちであるが。
「ほら、ついたよ。あの扉の向こうに進むんだ。その奥に閻魔さまがいるから。じゃあ、あたいはこれで」
「そうですか。どうも、ありがとうございます」
考え事をしていたうちに三途の川を渡り切ったようだ。
ここまで運んでくれた赤髪の死神に礼を言うと、言われた扉の方へと進む。
外来にいたころから犯罪を犯したことはない。
そりゃ、ポイ捨てを人生で一度もしたことがないような生真面目な人間ではないが、まず地獄行きということはないはずだ。
閻魔さまか。どんな人だろうか?
幻想郷の重鎮だから、先程の死神のように麗しい女性なのだろうか。
扉の奥は暗く、よく見えない。
奥に裁判所のようなところが明かりで照らされている。あそこへ行けばいいのだろう。
閻魔さまが座るであろうすごく高い席が見えるが、まだ閻魔さまの姿は見れない。
もう少し進めば明かりの下だ。そこまで行けば顔が見れるだろう。
閻魔さまの顔が見えた。
「え?」
俺はアホみたいな声を出してしまった。
「私から逃げ出した以来ですね○○。元気にしてましたか?」
静かだが、地獄の底から響いてくる様な声だった。
以来ってほど時間がたってないだの、死んだのに元気もクソもあるかなど、言いたいことはあったがそれどころ
ではない。
なぜ彼女がここにいる?
閻魔さまはどこ?
ああ、そうか。
彼女がついているという幻想郷の重要な仕事というのは・・・
「さて、あなたの判決ですが・・・」
その言葉を聞き、俺は冷汗が止まらなかった。脳裏には
癇癪を起し、許さないと叫んでいた彼女の姿がフラッシュバックされる。
俺は自分自身に大丈夫だと言い聞かせた。
大丈夫、これは仕事だ。閻魔が私情を考慮することなんでないはずだ
俺は生前、閻魔の裁判で有罪になるようなことは・・・
「有罪です」
判決は言い渡された。
そして、俺が次に声を出すよりも早く彼女は続けた。
「あなたは私を捨てた。あなたは私の想いを拒んだ。私の愛を受け取らなかった。許されません。
あなたは私を捨てた。許さない。他の女に対して笑顔を向けた。この私を・・・捨てた。
有罪です。許しません。有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪有罪」
「ひっ」
俺は情けないことに、恐怖から腰を抜かし、その場に崩れ落ちてしまった。
彼女はそんな俺の情けない姿を見て落ち着いたのか直前の怒りに満ちた表情から一転
にんまりと笑いながらクスクスと笑いだした。
「○○・・・罪深きあなたが行うべき善行はひとつです。私と添い遂げること。
そう、それこそがあなたの行うべき善行。転生なんてさせませんよ?」
俺は理解した。
死んで彼女から解放されたなんてことはなかった。
全くの逆だった。
俺は幻想郷で死ぬことで永遠に彼女から逃げられなくなった。
映姫様物。
キャラの名前を出さない形式だったんだけど、一番最初に映姫様物って書いた方がわかりやすかったかな?
最終更新:2024年12月04日 20:44