やっぱ、ヤンデレが別のヤンデレに眼前で想い人を寝取られるのってサイコーだよね
瞼がうっすらと開く。
左目は開かない、頭から流れた血が瞼に張り付いている。
何とか拭おうとしても、体が全然動かない。
目の前の床には、何本もの銀製のナイフが転がっていた。
その向こうで、男が、◯◯が苦しんでいた。
彼女の、想い人。紅魔館唯一の男。当主のお気に入り。
好きになって、狂おしいほどに好きになって。
でも、彼は当主のもので。彼を奪おうと駆け落ちしようとした。
何時の間にか、当主に対する忠義よりも彼に対する想いが上回っていた。
「見ていなさい、咲夜。貴女が愚かしい真似をしたから、急がなくてはならなくなったのよ。
本当はパチェの協力の元、念入りに準備を重ねて苦しまないようにしようと想ってたのに」
◯◯の向こう側、過剰な装飾品がちりばめられた椅子に座った少女。
衣服を着ていない青さすら帯びた体から血が流れている。
「咲夜が無駄に抵抗した時に流れた私の血を、全部◯◯の中に注ぎ込んであげたの。
◯◯がまだ女を知らないのは知っている……彼から貰っている血で知っているもの。
だからこそ、失敗などしようがない。勢いで始めたから◯◯は苦しんでいるけどね。
◯◯も莫迦だわ。貴女程度に惑わされて、躊躇いを見せるなんて」
床で這いずっている◯◯が、こちらに目を向ける。
その瞳孔は赤く、薄暗い部屋の中で爛々と輝いていた。
苦しげに開いた口、そこからは長く伸びた犬歯が二本見えた。
◯◯のうめき声と身じろぎが減っていく。
抵抗していた◯◯の人間が消え、本当の意味での吸血鬼になったのだろう。
「◯◯はこうなる運命だったのよ。私からは逃げられない。
私と◯◯の紡ぐ運命の糸は切れはしない。貴女のナイフ程度では糸筋一本削れやしないわ」
仰向けになった◯◯の上に当主がまたがる。
赤い瞳が輝いた瞬間、一瞬で彼が着ていた服が千切れて消えた。
満足気に青白くなった胸板を撫で回した後、当主は腰を一気に落とした。
目を見開いた彼女の制止など、まるで聞く価値など無いとばかりに。
「そこで見てなさい咲夜ぅ、はぁ、◯◯と、私が如何に深く繋がれるかを!
あ、あとで貴女にも御裾分け程度はしてあげるわ! 私の中に注がれたものをだけどね。
それともそれを指で貴女が◯◯に捧げるつもりだった場所に捩じ込んで見る?
直接交わらなくてもダンピールが産まれるかもよ!?」
嬌笑の中、意識が遠ざかる。
どこかで、◯◯の声が聞こえたような気がした。
最終更新:2013年11月06日 11:14