日本の集落では、子作りというのは重要なファクターである。
勿論、人間に対する脅威が多い幻想郷では人口を保つ為に健全で確実な子作りを奨励しなくてはならない。
昔でいう所の水揚げや夜這いと言った所か。

ところで、外来人も人里からすれば重要な人口増加のファクターでもある。
去る者は追わずで博麗神社から帰る者は引き留めはしない。
ただ、此方に定住する意志を持つ者は積極的に里に入り込めるように幇助する。
どうしても限られたコミュニティで幾世代も交われば問題が発生する様になる。
外来が結界越しに流れ込んで来る人間しか居ない幻想郷では、外来人は新しい血筋を入れる唯一の手段なのだ。

さて、三ヶ月前ほどからこの郷に流れ込んで来た○○という少年(17歳)
彼はこないだまでは普通の高校生であったものの、家族を事故で失い1人になった。
自分を引き取ることを躊躇し押し付け合う親戚達に嫌気がさし、とある田舎に傷心旅行に出かけた所いつの間にか幻想の郷に紛れ込んでいた。

幸いにも森を彷徨っている所を某雑貨店の店主に助けて貰い、人里までやって来た。
里長の1人である慧音の外界に帰るか?の問いに○○は首を横に振った。
愛する家族は全て死に、後は自分を厭う者ばかり。
だったら、ここに住まうのも悪くはないと。ここなら家族を失った痛みを忘れれるかもしれないと。

幸い、そこそこ体力が有り日本の高等教育を受けた○○はすんなりと里へと迎え入れられた。
大概の力仕事は何とかこなし、高い教養(寺子屋しか無い幻想郷では)を持つ○○はいろんな場所から仕事に誘われた。
(山の上の神社二箇所に配達しに行ったり、妖怪専用の店舗の店番したり、紅魔館への商品配送を行ったり、竹林の奥へ薬を受け取りに行ったり、
最近地上に出て来る様になった地底の住人と折衝したり、里でトラブル起こしてた天人を宥めたりと忙しかった)
そうして暮らしていった三ヶ月目のとある日、○○は慧音から呼び出された。

「え、ふ、ふふ筆下ろしですかっ」
「あ、ああ。お前はまだ女を知らないそうだからな」

何処か顔を赤らめ、そこはかとなく顔を逸らしながらも彼女は続ける。
この里に住むからには、誰かと結ばれ子を儲けて貰うという事。
そうやって外来の血を流し込み、里の血が濁るのを防ぐのが外来人を受け容れる条件なのだと。

顔を真っ赤にしている今時初心な○○を前にして、何故か太股を軽く摺り合わせながら慧音は続けた。

「ま、まぁそう言うわけだ。村では耕作の無い冬の間に行うのが通例だが、時期をあまり延ばすのは良くないからな。明日、村外れの集会所の離れに来るんだ」
「は、はぁ」
「そこにお前に色々と作法を教えてくれる人を派遣する。何、緊張する事はない、ぞ。ん、子を為す種族なら誰だって通る道だ」

元々、その離れはそう言った『教育』の為に作られているようだ。
本来なら冬に何組か少年と教える側の玄人を一晩泊まらせ、女とのまぐわい方、夜のお付き合いの仕方を教える。
ただ、やって来たのが春先な○○では、冬まで待たせるのは何だし17歳では間違いを犯しやすい。
トラブルが起きる前にきっちりと作法を教えよう……というのが慧音……もとい人里の方針らしい。

「……解りました。それがここのルールであるなら僕はそれに従います」

茹だった顔の○○は顔を伏せたまま返事をした為、慧音が艶めかしく上唇を舐めたのには気が付かなかった。


そして、当日。
夕暮れ時に○○が離れに入ったのを確認すると、慌ただしく慧音は準備を始めた。
入念に湯浴みをして身体を磨き上げ、体毛の処理をして置く。
柄にも無いと言って一度も使わなかった香を焚いた部屋で、肌襦袢を着込む。当然下着は着けない。
薄い化粧を施し、これまた柄にも無いと言って使わなかった紅を唇に差す。

「これで、佳し」

普段の仁義溢れる、頼れる里長の1人である上白沢慧音はそこに居なかった。
寂しげな少年に少々強烈な片思いを寄せる、『女』が其所に居た。

(通例をねじ曲げてでも強行した甲斐があった。これで、誰からも出し抜いて○○と契れる!)

満月でもないのに獣人化しそうな勢いで自宅を飛び出す。
こうなったのも、○○が悪いのだ。自分は悪くない。
○○があちこちで野良猫共(大小様々)をちょっかいを受けるようになったから、自分は予定を繰り上げなくてはならなくなった。
○○が優しすぎるから悪いのだ。だから、調子に乗って勘違いした雌猫共が○○を汚そうと近付いてくるのだ。
本当なら、冬になってから春になるまでしっぽりと自分を通じて女を教え込むつもりだった。
そしてあわよくば子を為し、既成事実を元に夫婦へと至るつもりだったのが―――こうして計画を繰り上げる必要が出てしまったのだ。

優しい○○の事だ。強引に迫られたら押し切られてしまうかも知れない。
そうしたら冬になる前に○○が手籠めにされてしまい、傷物にされてしまう。

(そうはさせるか、○○はこの私と結ばれて、慎ましく人里を支えるんだ。与太郎達に手出しはさせないー!)

ちなみに、慧音と同じ考えを抱く人及び妖が一斉に村はずれの集会所を目指しているのを慧音は知らない。
勿論、枕が2つ並べられた布団を前にウロウロしている○○が知る由もなかった。

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最終更新:2011年03月04日 00:52