スレタイSSその5。テーマは第13夜。
ある日
アリスに呼び出された。
なんでも、完全自立人形の作成法が分かったとか。
「いらっしゃい。こっちよ」
アリス邸に着くなり薄暗い地下室へと案内される。
そこには、一対の人形が鎮座していた。
「これが……そうなのか?」
「ええ。あとは動力源を確保するだけよ」
その動力源が何か気になるが、同時にもう1つ気がかりなことがあった。
それはこの2つの人形があまりにも自分達がよく知る人物に似ていたからだ。
どうやって作ったのか、そもそも本当に人形なのか?
そんな疑問を浮かべる程に目の前の人形は美しかった。
露出している肌は瑞々しく、生者のそれを思わせ、瞳は照明に反射し怪しく光っている。
吸い込まれそうな錯覚を感じながらも、目が離せない。
「動力源の話がまだだったわね」
食い入るように見つめていると、アリスが説明を再開させる。
彼女は自らを象った人形の頬を撫でながらこう言った。
「人の魂よ」
「魔力じゃないのか?」
「動くことは動くけど、それでは従来の人形と変わらないわ。
でも人の魂なら継続的な魔力の継ぎ足しを必要としない。謂わば永久機関よ。
人型にしたのも魂を定着させやすくするためなの」
なるほど、と感心していたが、当然のように疑問が浮かぶ。
人に似せたのは魂を入れやすくするため。だが、肝心の魂はどこにある?
どうして俺達をモデルにしてあるんだ?
そんなの決まっている。俺の予想通りなら、恐らくこの人形は――
「もう分かったでしょ? 媒介する魂は」
そこでアリスはこちらに向き直り、はっきりと告げた。
「貴方と私よ」
コツン、とブーツが石畳を鳴らす。
アリスはゆっくりと距離を詰めてくる。
合わせてドアまで後退する。そのまま扉を開けようとしたが、できなかった。
ドアノブは錆び付いたかのようにびくともしなかったからだ。
そして、当然と距離は0になる。
しゅるりとアリスの細腕が体に回される。
熱を帯びた甘い声で彼女はこう囁いた。
「いつまでも一緒に暮らしましょう?」
この日を境にある男性が姿を消した。
森の中で見かけたという噂もあるが、真相は定かではない。
最終更新:2013年09月16日 02:48