『貴方を手に入れるためなら、どんな汚い手も使うわよ。』

最近良く遊びに来る天人が、俺にそんな事を宣誓して行った。
まさか恋われてるとは思わなかったので思わずとりあえず友達から、と言ったら
「友達とか恋人の関係すっ飛ばして私の婿になってほしいのよ。言わせないでよ
 恥づかしい!」
と、本人は軽く突き飛ばした・・・つもりだったらしい、が。
俺の家の玄関から居間に通じる襖は、綺麗に無くなっている。
言わずもがな吹っ飛ばされぶち抜いた結果だ。

お詫びに置いて行ったのは、ちゃぶ台の上に鎮座する桃一個。
食べていいものか迷う。
その形のよさと色づきを見てるうちに、何でか彼女の尻を思い出す。
「何を考えてるんだ、俺は。」
頭を振って考えを追い払う。

「しかし、桃と言うのは・・・エロティシズムの具現化みたいな形だよな。
 昔の歌に『丸いお尻が許せない』ってのがあったが・・・
 作った人も俺と同じ考えだったんだろうか?」
桃の表面を撫でる。
「彼女のお尻もこんな感じなのかなあ・・・。」

そのとき、後ろから声がかけられた。
「ふーん、桃を見て私のお尻に考えが行き着くんだ・・・。」
振り向くと、天狗のブン屋と天人・・・天子がニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて
立っている。
「・・・諦めてなかったのか。」
「当たり前でしょう?私は貴方に宣言した通りに貴方を手に入れたいんだから。」
「だから急くなと言っただろう。」
「私のお尻を夢想して桃撫でてた男の言う台詞じゃないわね。」
俺は勝ち誇った顔の天子の隣に居るブン屋に訊く。
「文さん、ここには何ゆえに?」
「お客様の頼みで証拠固めを。」
そう言って取り出したのは何処から手に入れたのか、ハンディレコーダーが。
『彼女のお尻もこんな感じなのかなあ・・・。彼女のお尻も』
いきなりリピートしだす。
「と言うわけで、後はこれを記事にするかしないかは貴方の答えいかんにかかってるわけです」
汚いなさすが天人汚い。
そこで天子がビシッと最終通告を突きつけた。
「幻想郷全体に性癖をばら撒かれて居場所を無くすか、穏便に私の願いを受け入れるか
 どっちを選んでもいいけど、エンディングはどちらも私のお婿さんよ?」

      • 勇者も逆らえねえじゃねえか。何この2択。

「まあ、貴方がそれを嫌がって死を選んだとしても、最近永遠亭で極秘の技術が
 出来たって言うから、何万回でも生き返らせてかしづかせるわ。
 抵抗が激しければ、それはそれで楽しめるから。」
舌なめずりと嗜虐的な笑み。
ブン屋は隣でレコーダーを作動させながらメモを取っている。

そこで、俺は手を上げて降参の意を示した・・・。
最終更新:2013年09月16日 17:47