円熟したヤンデレカップルっていいよね(花粉怖い
「冬の妖精じゃないけど、春が来なければいいなとこの時期は思うの」
俺がこの家で住み始めてから増設した温室で花に水をやってると幽香が声をかけてきた。
気怠そうなガウン姿。冬の時期は何時もこんな感じらしい。
前は春が来ないかしらとブツクサ言ってたじゃないかと突っ込みながら、花の蔓を優しくなぞる。
こうして直接触れて状態を確認しながら世話をすると、草花というものは驚くほど元気に応えてくれる。
フラワーマスターたる我が妻には劣るけど、これでも経験はかなり積んだと自負はしている。
「だって、春になると貴方が丘の外に出る回数が増えるから」
幽香に喜んで欲しくて始めた事なんだけどな。
狭いようで多用多種の植物や草木が集まる幻想の郷。
彼女が気に入りそうなものを見つけ、この丘に連れてくるのが俺の趣味なのだ。
「貴方の気持ちは嬉しいけど……やっぱり一緒に居る方がいい」
嬉しい事言ってくれるじゃないの我が妻。
しおらしい態度が何とも俺の心を擽る。ちょっと蔓を強く掴んだ所為で花に怒られた、すまん。
彼女と戦ったり喧嘩を売られた連中が見たらどんな面するだろうか。
まぁ、俺だけのものだから見せないけどね。
彼女がここまで愛おしくなるまでの過程は凄かった。
この温室で言えば、春から晩秋まで俺をここに監禁するつもりだった事とかだな。
そうすれば丘から出る事もなく、この家に俺がずっと居てくれると幽香は言った。
手に何故か良く磨いだスコップを握ってたので、割と本気で焦りながら説得したのを覚えている。
彼女の家でずっと暮らすのも悪くないけど、自分で動けた方が過ごしやすいのも事実だし。
幽香は俺が頼めば全ての世話を嬉々としてこなすだろう。
だが、俺は鉢植えの花じゃないしね。与えられるだけの役割なんてご免だ。例え彼女の願いでも、だ。
幻想郷で飛びっきりに危険な女と言われた彼女を愛する半分人間止めた男だ。
だからこそ、この時折愛情が行き過ぎてマスタースパークしちゃってる妖怪を自分の手で愛したいのだ。
「そんな不安になるという事はまだ物足りないんじゃないかなー?」
「ちょ、ちょっと……もう」
すすーと近づき優しく囁いた後、彼女を抱き上げ寝室へと向かう。
数時間前まで耕作が繰り広げられていた夫婦のベットへ、再び俺は耕作を行うべく向かう。
うん、やっぱり夫婦は与え与えられる関係でないとな。
多少女性側がアレだとしても、愛してるなら受け止めるのが男の甲斐性ってもんだ。
以前、里に住んでる外来人達にそう言ったら何だかバケモノ見るような目で見られたけどあれはなんだろうな?
まぁいいさ、俺は幽香を愛してるし、こうして愛し合えれば他に考える必要はない。
「幽香」
「な、なによ○○」
「愛してるよ、春になっても、夏になっても、秋が来ても、冬がまた来てもずっとね」
外の桜の木より一足先に幽香の頬が桜色に染まり、俺はその頬に愛情を込めて口付けた。
最終更新:2013年09月16日 18:07